2019 Fiscal Year Research-status Report
サルコペニア関連microRNAの消化器癌進展に対する分子機序の解明と臨床応用
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19K23922
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
木内 純 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (10847180)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 癌抑制型microRNA / 胃癌 / サイコペニア / エクソソーム / エクササイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
胃癌患者血漿サンプルにおける筋由来microRNA(myomiR)の発現をqRT-PCRで解析し、その中で血漿中myomiR-133b濃度が患者の骨格筋量に相関していることを発見した。ヒト正常組織内でmiR-133bは骨格筋で著明に高発現しており、またサルコペニアモデルマウスにおいて骨格筋量の減少ともに血漿miR-133b濃度が低下してくることを確認した。ヒト胃癌細胞株にmiR-133bを過剰発現させたところ、増殖能、浸潤能は有意に抑制された。このことから、骨格筋量の減少とともに骨格筋由来の癌抑制型microRNAであるmiR-133bの血漿中濃度が低下し、これがさらなる癌の進行を助長していると考え、骨格筋-胃癌細胞間のmiR-133bを介した細胞間分子伝達機構について解析することとした。胃癌細胞株とヒト正常骨格筋細胞株(SkMC)を共培養したところ、SkMCの濃度依存的に胃癌細胞株の増殖能は抑制され、またSkMCのmiR-133bの発現をanti-miRNAを用いて抑制したところ、胃癌細胞株の増殖能は回復した。同様の傾向は遊走、浸潤能についても確認できた。さらに、胃癌細胞培養液中のエクソソーム内のmiR-133b濃度は、SkMCとの共培養によって有意に上昇し、またSkMC内のmiR-133b発現を抑制すると低下した。また、培地中のmiR-133b濃度増加に伴い胃癌細胞株内のmiR-133b濃度も増加した。これらの結果から我々の仮説どおり、骨格筋はmiR-133bをエクソソームに埋包する形で体液中に分泌し、これによる癌の進展が抑えられていることが確認できた。これはサルコペニア自体が癌の進行を誘導し得るという、これまでに報告のない分子機序である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に予定していた実験のうち、筋細胞由来の癌抑制型microRNAの同定(miR-133b)と、これの胃癌細胞に対する機能解析は既に終了している。またmiR-133bを介した骨格筋と癌細胞との細胞間相互作用についても解析しており、申請時に予定していた実験のおおよそ半分の実験を既に完了しているため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに胃癌患者の血漿サンプルや胃癌細胞株を用いたin vitro、in vivoの解析により、骨格筋と癌細胞との間のmiR-133bの伝達機構について解明してきた。今後は、同様の機序が大腸癌や膵癌などの他癌腫においても確認できるかどうかを、各癌腫の血液サンプルや細胞株を用いて検証する。また、エクササイズによる骨格筋量の維持が腫瘍の進展に与える影響についてもin vivoでの解析を予定している。加えて、miR-133b以外にもサルコペニア症例の不良な予後に関連している分子があると考えられるため、血液サンプルを用いたマイクロアレイ解析およびRT-PCR法により解析候補を同定し、その分子が癌細胞への及ぼす役割および細胞間伝達機構について解析する。
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