2019 Fiscal Year Research-status Report
スタチン高感受性がんを用いた「スタチンの効きやすさを保証する分子」の絞り込み
Project/Area Number |
19K23926
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
割田 友子 関西学院大学, 理工学部, 講師 (00753112)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | スタチン / がん細胞 / 糖代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
HMG-CoA還元酵素阻害剤であるスタチン系薬剤は高コレステロール血症の治療薬であるが、一部のがんを抑制する作用があることも報告されている。本研究では、スタチンが効果を発揮するがん細胞と効果を発揮しないがん細胞の違いを明らかにするため、スタチン感受性がん細胞(HOP-92)と耐性がん細胞(NCI-H322M)を用いて、スタチン投与により変動する代謝物および遺伝子発現を網羅的に解析・比較した。 スタチンの影響が顕著に表れた代謝系の1つとして解糖系が挙げられた。スタチン感受性のHOP-92細胞では、フルクトース-1,6-ビスリン酸(F1,6P)とその下流のグリセルアルデヒド-3-リン酸(G3P)の量がアトルバスタチンの用量依存的に減少した。興味深いことに、F1,6Pの1つ上流であるフルクトース-6-リン酸(F6P)の量は、スタチン処置の有無にかかわらず変化を示さなかった。すなわち、F6PからF1,6Pへの変換に関わるホスホフルクトキナーゼが、スタチン感受性のがん細胞で影響を受ける可能性があるのではないかと推察された。次に行った遺伝子発現解析において、ホスホフルクトキナーゼ発現の有意な変動を確認できたため、今後さらなる解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スタチンに感受性を示すがん細胞(HOP-92)では、スタチンの添加によりF6PからF1,6Pへの変換に関わるホスホフルクトキナーゼ活性が障害され、糖代謝が大きく抑制されている可能性を見出すことができた。代謝物の挙動からスタチン感受性がん細胞の特徴の一端を明らかにすることができ、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、スタチンに感受性を示すがん細胞ではホスホフルクトキナーゼがスタチンにより影響を受ける可能性が示唆されたため、今後はホスホフルクトキナーゼを中心に解析を進めていく。まずスタチン感受性がん細胞と耐性がん細胞におけるホスホフルクトキナーゼの活性度合の違い、およびmRNAレベル、タンパクレベルでの発現量の差を明らかにする。また、スタチン感受性がん細胞では糖の取込みをはじめとした中心炭素代謝が大きく抑制されている可能性が考えられたことから、グルコースの取り込み量を測定するとともにグルコーストランスポーターのmRNAレベルおよびタンパクレベルでの発現量の変化を調べ、スタチン感受性がん細胞と耐性がん細胞での細胞特性の違いを明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、年度内に納品できなかったためである。 タンパクの発現解析を行うための転写装置および検出装置の購入に使用する。
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