2019 Fiscal Year Research-status Report
核小体機能を標的とした新たな細胞増殖抑制機構の解明
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19K23927
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
渡邉 健司 公益財団法人がん研究会, がん研究所 がん生物部, 研究員 (80404333)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 小化合物 / 核小体ストレス / ファイトアレキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
一般にがん細胞では正常細胞に比べ、核小体の形態的な増大と核当たりの核小体数が多いことが知られている。このことよりがん細胞では正常細胞より核小体機能が亢進していると考えられている。そのため核小体機能を抑制する化合物を見出すことが出来れば、その化合物によってリボソーム生合成の破綻に起因する核小体ストレスかつタンパク生合成の低下を惹起させるためがん細胞増殖を効率よく抑制できると考えられる。しかし現在のところ核小体を標的とした抗がん剤は臨床応用に至っていない。本研究は、(i)核小体機能を阻害することによってがん細胞の増殖を抑制する植物由来の化合物(発芽大豆からの抽出物で、主にファイトアレキシン)を見出すこと。(ii)がん細胞における核小体機能を標的とした新たな細胞増殖抑制機構を解明すること、および(iii)ライブイメージングを用い核小体ストレスを細胞内で検出することによって、新規のがん細胞の増殖抑制を抑制する化合物をスクリーニング可能なアッセイ系を確立することを目的としている。 今回、発芽大豆抽出物より液体クロマトグラフィーにより29の粗分画が分取された。がん細胞であるU2OS細胞にGFP-DHX9を安定的に発現する細胞株にまずこれら29の粗分画それぞれ体積比で培地の100分の1の割合で添加した。その後37℃で60分間培養後にGFP-DHX9の局在をライブイメージで観察した。29の発芽大豆粗分画抽出物のうち1分画(#6)にGFP-DHX9の局在に変化が認められた。またこの粗分画#6をU2OS細胞に培地の100分の1の割合で添加し、3日後に細胞増殖を確認したところ、コントロール溶媒を細胞に添加した際と比較して明らかな細胞増殖抑制効果を認められた。この実験条件下では、同時に分取された他の28の粗分画には同様のGFP-DHX9の局在変化およびU2OS細胞の増殖抑制効果は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高等植物が微生物の侵入を受けるなどある種のストレス環境下において、様々な防御反応の結果として植物内で低分子化合物ファイトアレキシンが生合成されることが知られている。この低分子化合物ファイトアレキシン群の中にがん細胞の増殖を抑制する化合物があるのではないかと予想していた。今回、発芽大豆抽出物である29のうちの1つの粗分画に核小体ストレスを惹起する小化合物が含まれていることが分かった。また、この粗分画でがん細胞を処理することにより明らかな細胞増殖抑制効果を認めることが分かった。当初予想していたとおり発芽大豆抽出物には核小体ストレスを惹起し、かつがん細胞の増殖抑制効果を認める小化合物が含有されることが分かった。またスクリーニング方法としてGFP-DHX9を発現する安定細胞株を用いた実験系も機能している
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、発芽大豆抽出物の粗分画(#6)をさらに液体クロマトグラフィーにより再分画する。その分取された分画を用いて同様に細胞を用いたアッセイを繰り返し行う予定である。このように発芽大豆由来の小化合物の同定をスクリーニング化合物の提供者である研究協力者の協力のもと進め、最終的に核小体ストレスを惹起し細胞増殖を抑制する標的小化合物を同定する。 化合物が同定された後は、この小化合物がどのような機序でがん細胞に核小体ストレスを惹起し、かつ細胞増殖抑止効果を示すのかについて調べる。つまり研究実績の概要(ii)で述べた、がん細胞における核小体機能を標的とした新たな細胞増殖抑制機構について当初の予定通り生化学的及び細胞生物学的な実験手法を用いて詳細に調べる予定。また、同定された化合物の正常細胞への毒性についても同様な手法を用い調べる予定である。
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