2020 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝的多様性を有する癌細胞間の環境適応勝者の決定機構の解明
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19K23929
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
山盛 智子 (森田智子) 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 特任研究員 (10767750)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 染色体不安定性 / がん / 細胞競合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、染色体不安定順応性モデルを用いて、遺伝的多様性を有する癌の細胞競合に関与する因子・シグナル経路を比較解析し、癌の高度な環境適応能の詳細を明らかにすることを目的としている。 本研究実施期間中に染色体不安定順応性モデルとして異数体化細胞を樹立し、各種オミックス解析や生化学的な実験を実施した。 異数体化細胞は樹立過程で約90%の細胞が死滅し、異数体化には大きな細胞ストレスを伴うことが示された。一方、生き残った約10%の細胞は主に4倍体の核型で存在しながら親細胞と同等に増殖することが明らかになった。異数体化細胞は親細胞と比較して、細胞の肥大化・細胞内顆粒の増加・扁平した形態を示す。これらは老化細胞の形態的な特徴であることから、他の細胞老化の指標であるSA-b-galactosidase assayを実施した。異数体化細胞は親細胞と比較して有意なSA-b-galactosidase陽性率を示し、細胞老化様の特徴を有することが明らかになった。これらの表現型の根幹を探るため、RNAシークエンス、Exomeシークエンス、ATACシークエンスをそれぞれ実施し、遺伝子発現や変異、転写活性化領域の構造の比較を行った。RNAシークエンスの結果から、発現変動のあった遺伝子群は異数体化細胞の大きな細胞形態を維持するために必要な遺伝子発現の変化であると推測している。しかしながら、遺伝子変異や転写活性化領域の構造に顕著な差はみられず、異数体化細胞の環境適応には遺伝子変異や転写活性化領域の構造変化は伴わないと考えられる。特定の条件下では異数体化細胞でのみATP量の顕著な減少が示された。そして、同条件下における代謝産物の変化を見るためのメタボローム解析を行った結果、脂質やアミノ酸に関連する代謝経路に変化があった。以上の結果から、異数体化細胞は、遺伝子変異や転写活性化領域の構造変化は起こさずに増殖し、代謝経路を変化させることで環境に適応していると考えられる。
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Research Products
(4 results)