2020 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト多能性幹細胞(Muse細胞)による放射線障害の治療法開発
Project/Area Number |
19K23935
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
藤嶋 洋平 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 助教 (80846684)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 放射線障害 / Muse細胞 / 多能性幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Muse細胞は、骨髄の間葉系幹細胞(MSC)からヒト多能性幹細胞マーカーであるstage-specific embryonic antigen-3(SSEA-3)と間葉系幹細胞マーカーであるCD105の二重陽性細胞として単離可能で、自発的に、外胚葉系、中胚葉系、内胚葉系の細胞に分化することができる。腫瘍形成をせず、他家移植が可能である。さらに静脈投与等により、障害部位への特異的な遊走・生着能を持ち、障害を受けた細胞に取って代わり、分化した細胞として生存し機能する。 Muse細胞はこれまで幹細胞に分化することは確認されておらず、その点が臨床的に用いる場合の適応や有用性の限界の原因となっている。東北大学医学部動物実験施設が改修のために利用できなかったので、Muse細胞やMSCをより未分化にすることにより、正常組織の放射線障害の治療等における臨床上の有用性を増すための基礎的研究を行なった。 骨髄の幹細胞や癌細胞ではニッチと呼ばれる低酸素・低栄養の特別な環境で細胞は生育している。ニッチの環境は幹細胞性の維持に必要な条件と考えられる。このため、低酸素・低栄養状態がMuse細胞に与える影響を検討した。低酸素・低栄養状態では、SSEA-3抗体陽性細胞として幹細胞から分離したMuse細胞のSSEA-3陽性率は低下した。同様に間葉系幹細胞(MSC)に対する低酸素・低栄養の影響を、KLF4、Lin28、Nanog、OCT4など、ES細胞やiPS細胞で高発現している幹細胞マーカーを指標として検討した場合には、それらの発現は低酸素・低栄養によって亢進し、より未分化になったと考えられた。これらのことからMuse細胞とMSCの関係を考えると、Muse細胞よりもMSCの方がより未分化であると考えられた。
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