2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23937
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
白井 福寿 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, リサーチアソシエイト (20849038)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | シナプス形態解析 / 樹状突起スパイン / イメージング / 死後脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
侵襲的解析が困難なヒト脳研究において死後脳解析は、脳内で実際に起きているミクロスケールの病変を解明するための重要な手段である。実際に、死後脳解析からは多くの精神疾患におけるシナプス形態・機能異常が強く示唆され、精神疾患の動物モデルにおいても再現されている。しかし、死後脳は数時間以上の死後安置期間が生じるため、死後脳研究で得られた知見が生前の病態生理を反映しているのか、死後の時間経過による副次的変化であるのかの判別は困難であった。本課題の重要性は、生きた状態や既に固定された状態の神経細胞を対象とする他の研究とは異なり、死後脳サンプルが置かれる特殊だが無視することのできない条件下における変化を詳細に解析する点である。本研究によって、死後脳内で維持される・変化する構造が何であるかを明らかにすることで、精神疾患の病態を予測するための基礎的な知見を得る。動物の脳神経細胞を継続的に観察できる2光子in vivo イメージング法を用いて、動物の生前から死後に渡って脳内の神経細胞やシナプスがどのような変化を辿るのかを観察した。具体的には、蛍光タンパク質単体や、PSD-95やactinといった分子ドメインと蛍光タンパク質との融合タンパク質をコードする遺伝子を大脳皮質の錐体細胞に導入し、発現させる。In vivo 2光子イメージング法を用いることで、蛍光タンパク質単体は神経細胞全体の形態を、融合タンパク質は樹状突起スパインなどの特定の構造の形態をそれぞれ経時的に観察し、縦断的・定量的に解析する。当手法を用いて、イソフルランによる麻酔下における樹状突起とスパイン形態を観察し、安楽死後の樹状突起やスパインの形態変化についての知見を得つつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプル数はまだ十分ではないものの、目的とするin vivo 2光子イメージング法を用いて、樹状突起と樹状突起スパイン形態を生前から安楽死後に渡り観察する方法は確立できたと考えている。 予算の繰り越しの主な理由は、申請者が所属する研究室の異動に伴い、本研究の遂行に必須である2光子顕微鏡システムの移設を行ったため、一時的に実験を停止したためである。無事に移設を完了し、マウスの飼育環境整備も完了した。先述の通り、動物飼育施設と顕微鏡室が同じエリア内にあるため、実験結果に影響しうる様々な環境変化要因を可能な限り排した上での実験が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
In vivo 2光子イメージングシステムを用い、神経細胞形態の継時観察を行い、定量的な結果として示す。 また、2019年度には、ブレインバンク等を介した臨床検体を用いた研究との連携を行うため、福島県立医大の研究者とディスカッションを行った。本課題が目的とする動物モデルと臨床検体の共通点・相違点を見出すため、今後もディスカッションを継続する。
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Causes of Carryover |
当該年度に人的異動に伴う実験機器の移設があり、一時的にマウス等の飼育数が予定より減少した事が主な理由である。すでに飼育環境等は整備が終わっているため、次年度使用額はマウスの飼育維持に充てる予定である。
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