2020 Fiscal Year Research-status Report
軟X線および中硬X線領域の電子線に対する空気のW値の絶対計測
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19K23960
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐藤 優樹 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 診療放射線技師 (40839875)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 空気のW値 / 放射線計測 / 放射線防護 / グラファイトカロリーメータ / グラファイト壁空洞電離箱 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線を計測することは放射線治療, 放射線防護および放射線の産業利用などの様々な分野で重要な役割を果たしている. その中で, 空気のW値は乾燥空気中に1つのイオン対を生成するために必要なエネルギーとして定義されており, 放射線量を決定する際に欠かせない物理量の1つである. しかし、一般的によく利用されている放射線に相当する電子のエネルギー範囲 (数10 keVから400 keV) では、実際に測定されているエネルギー点が非常に限られており、電子に対する空気のW値のエネルギー特性が明確になっていない。そこで、本研究では数10 keVから400 keVのエネルギー範囲の電子に対する空気のW値のエネルギー特性を明らかにすることを目的とする. これにより放射線計測の不確かさを改善し、放射線利用の安全性向上に貢献する。 目的を達成するために, 初めに空気のW値を測定する技術の開発および検証を行った. 本研究では、グラファイトカロリメータによる吸収線量およびグラファイト壁空洞電離箱による電荷の測定値に基づいて空気のW値を決定した。この手法を用いて測定したCo-60 ガンマ線における測定値とICRU Report 90の推奨値 (33.97 eV) を比較することで、計測技術の検証を行った。本手法を用いて測定したCo-60ガンマ線の測定値は、不確かさ0.06 eV (k = 1) を有する34.06 eVであった。これは、現在の推奨値と非常に良い一致であり、本手法を用いることで空気のW値を精度良く決定できることわかった。 2020年度は、2019年度に開発したこの測定技術を用いて、Cs-ガンマ線の測定を行っていたが、線量計の故障により、予想通りに研究が進まなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度に開発した空気のW値を測定する技術に使用しているグラファイト壁空洞電離箱が、2020年度の実験中に故障したため、研究の進行に遅れが出ている。電離箱はすでに修理が終わっており、2021年度を使って研究を遂行したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に当初終了予定だった、Cs-137ガンマ線に対する空気のW値の測定を行う。新た 論文サーベイの結果、6 MeVから10 MeVの高エネルギーの範囲でエネルギー依存を示唆する 実験データが報告されていることが判明したので、Cs-137の測定が終了次第、こちらの 究に移っていく。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により、ほとんどの学会がオンライン開催になってしまい、使用する機会がなかったため。
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