2019 Fiscal Year Research-status Report
膵β細胞での脂肪毒性に関わるABCA1発現制御機構の解明
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19K23970
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
佐藤 誠祐 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (50843504)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ABCA1 / 脂肪毒性 / インスリン / GLP-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
HDL代謝のメイン分子であるABCA1は膵β細胞においても発現しており、その発現が低下することで細胞内の脂質蓄積を誘発し、脂肪毒性と呼ばれる細胞毒性を呈する。ABCA1は様々な因子によりその発現を調節されており、我々はABCA1を調節する様々な因子について報告してきた。その内の1つとして炎症性サイトカインであるTNF-αはp38-MAPKを介してABCA1の発現を低下させ、脂肪毒性を惹起し、インスリン分泌も低下させることを明らかにした。 本年度は慢性炎症を引き起こす代表的疾患であるNAFLDとABCA1の関係性について検討した。NAFLDは臨床的にGLP-1により改善がみられることが報告されているが、その機序については不明であった。我々はGLP-1がABCA1発現を増強することにより肝細胞での細胞内脂質が減少し脂肪肝が改善しているとの仮説をたて検討した。 アメリカドクトカゲの毒液由来であるExendin-4を用いてHepG2細胞における作用を検討したところ、Exendin-4は用量依存的、かつ時間依存的にABCA1の発現を増強させた。我々は過去の研究にてGLP-1のABCA1に対する作用は一部CamKK経路を介することを確認していたことから、今回の肝細胞に対する作用にもCamKK経路が関係していると仮定しCaMKK阻害薬であるSTO-609を用いたところGLP-1のABCA1増強作用はキャンセルされることが確認された。マウスに対してExendin-4を投与することでコントロールと比較し肝細胞のABCA1が増強されること、肝細胞内の脂質が減少することが確認された。これらの結果より、GLP-1は肝細胞のABCA1発現を増強することで細胞内脂質を減らせることが確認された。脂肪肝合併の糖尿病に対してはGLP-1の積極的な投与が有効となる可能性が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、高選択性PPARαモジュレーターであるK877(ペマフィブラート)を用いて、過去に確認したTNF-αによる膵β細胞での脂肪毒性が解除できるかについて研究中であり、良好な結果を得ている。このことにより、膵β細胞でのABCA1制御機構に関する新たな知見と脂肪毒性解除を期待できる薬剤の選定が行える予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
耐糖能障害を有する病態を参考に候補となる因子について検討し、その因子を膵β細胞のcell lineに負荷し脂肪毒性が誘導されるか確認する。誘導された場合にはプロテインキナーゼの発現パターンを、網羅的に細胞内情報伝達系を検出するmulti-kinase抗体で検討する。また、検出された細胞内情報伝達系の阻害薬を使用し、グルコース依存性インスリン分泌能の変動を指標として、脂肪毒性を惹起する因子や細胞内情報伝達系について同定する予定である。また、現在進んでいるK877と膵β細胞のABCA1発現との関係についても更なる研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
COVID19感染蔓延による研究の遅延や関連学会への参加困難が生じたため。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Role of ATP-binding cassette transporter A1 in suppressing lipid accumulation by glucagon-like peptide-1 agonist in hepatocytes2020
Author(s)
Jingya Lyu, Hitomi Imachi, Kensaku Fukunaga, Seisuke Sato, Toshihiro Kobayashi, Tao Dong, Takanobu Saheki, Mari Matsumoto, Hisakazu Iwama, Huanxiang Zhang, Koji Murao
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Journal Title
Mol Metab
Volume: 34
Pages: 16-26
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research