2019 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経系における受容体結合性因子の病態生理学的意義
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19K23974
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
金口 翔 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (30846986)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 認知症 / 中枢神経 / レニンーアンジオテンシン系 / ATRAP |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病や高血圧などの生活習慣病を有する人は認知機能の低下を招きやすいことから,心血管系疾患の発症・進展に関わるレニン-アンジオテンシン系(R-A系)が認知機能障害にも深く関与していると考えられる。我々の研究グループでは,1型アンジオテンシンII受容体(AT1受容体)結合性低分子蛋白(AT1 receptor-associated protein; ATRAP)が,AT1受容体の生理的情報伝達系には悪影響を与えずに, 病的刺激の持続によるAT1受容体下流の臓器障害と関連した情報伝達系の過剰活性化に対してのみ選択的な抑制作用を発揮する可能性が高い分子であることを,これまでに報告してきた.本研究は,「脳局所でのATRAPの発現あるいは活性が,認知症の発症・進展に関与し,ATRAPの発現制御により認知症を制御できる」との仮説をたて,ATRAPと認知症との関連について,認知症モデル動物を用いた脳ATRAPの発現調節,脳特異的ATRAP高発現による認知機能への影響を検討し,ATRAP の認知症における病態生理学的意義の解明,およびATRAP に着目した新規分子標的治療法の開発に向けた検討を行うことを目的にしたものである.今年度は,予備的検討として,高血圧モデル動物における中枢神経でのATRAP発現調節を検討した.具体的には,中枢神経系におけるR-A系の主要な伝達系とされる脳弓下器官(SFO)-室傍核(PVN)に着目し,ATRAPとAT1受容体の発現を,高血圧モデルSHRと正常血圧モデルWKYで比較検討したところ,SHRではSFO,PVNにおいてATRAP/AT1受容体発現比がWKYと比較して低下している可能性が示唆された.引き続き検討を継続していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初,中枢神経におけるATRAP,AT1受容体などのレニンーアンジオテンシン系コンポーネントの発現分布を免疫染色で確認する予定であったが,技術的に難しかった.そこで,レーザーマイクロダイセクション法を用いて,神経核ごとにATRAP,AT1受容体の発現量をmRNAで比較検討する方針にした.この方法では,ATRAP,AT1受容体のmRNAは検出可能であったが,検体のサンプリングに時間がかかるため,研究の進捗に遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
中枢神経におけるATRAPの発現調節について,N数を増やし,再現性を確認していく. ATRAPを高発現させられるウイルスベクターを作成していく.
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