2019 Fiscal Year Research-status Report
肺癌における転写因子ASCL1の免疫応答抑制機構の解明とその臨床応用
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19K23981
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮下 直也 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50843041)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 肺癌 / ASCL1 / 肺腺癌 / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
ASCL1陽性の肺腺癌はPD-L1・MHCクラスII分子などの免疫関連遺伝子や、T細胞・B細胞・NK細胞などの免疫細胞マーカーの発現レベルが極めて低く、腫瘍免疫応答が強く抑制されているが(Miyashita et al. J Thorac Oncol. 2018)、そのメカニズムは未解明であり、癌特異抗原の発現、抗原提示、免疫細胞の活性化・遊走、腫瘍組織への免疫細胞浸潤など、様々な細胞応答での変化が推測される。 本研究では、神経内分泌分化のマスター制御因子ASCL1の機能に着目し、ASCL1を発現する肺腺癌や肺小細胞癌における免疫応答抑制機構を解明することで、肺癌の分子病態の解明、治療効果予測因子の同定、新たな治療アプローチの開発に寄与することを目的としている。 現在までの研究実績は下記の通りである。①ASCL1により制御される遺伝子のプロファイリング:ASCL1陽性肺腺癌細胞においてASCL1ノックダウンを行い、RNAシーケンス解析によりASCL1の標的遺伝子群を網羅的に同定した。さらにASCL1発現レトロウイルスベクターを作成し、ASCL1発現細胞でもRNAシーケンス解析を行い、ASCL1により制御される遺伝子のプロファイリングを行った。②ASCL1が腫瘍内浸潤を抑制する免疫細胞の同定:マウス肺腺癌細胞の同系同所移植モデルの実験系を確立し、複数の細胞株を用いた実験で、ASCL1遺伝子導入を行った細胞では腫瘍内部におけるT細胞浸潤が低下することを発見した。免疫細胞のサブセットをより詳細に明らかにするため、免疫細胞マーカーの免疫組織化学染色やフローサイトメーターによる評価を行った。③ASCL1陽性の肺癌細胞から産生される液性因子の解析:ASCL1を発現させた肺腺癌細胞における抗体アレイを施行し、ASCL1によって多彩なケモカインの産生が抑制されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ASCL1が肺腺癌において腫瘍免疫応答を抑制するメカニズムについて、in vitroの実験とトランスクリプトーム解析とを順調に終えることができ、その一端を解明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は①ASCL1陽性の肺癌細胞におけるmiRNA発現解析および腫瘍免疫応答との関連の解明②ヒト肺癌組織検体におけるASCL1発現と腫瘍免疫応答の包括的検証、を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究自体は順調に進行したが、論文投稿にまでは至っておらず、想定よりも使用額が少なかった。今後は物品費、論文投稿にかかる費用ふくめ大幅に支出が増える予定であり、助成金を使用してく予定である。
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