2019 Fiscal Year Research-status Report
心筋エネルギー代謝に着目したファブリー心筋症の病態解明
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19K23984
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藏本 勇希 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (50843794)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ファブリー病 / iPS細胞 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度はファブリー病患者由来iPS細胞の新規樹立・解析と、ファブリー病患者のゲノム解析を行い、心筋エネルギー代謝異常の確認とその機序解明に必要な情報の収集を行った。 ファブリー病患者由来iPS心筋細胞はグルコース枯渇状態にすると健常人由来iPS心筋細胞よりも早期に収縮速度が低下することを高密度播種の同期拍動による評価系で確認しており、これに加えてiPS心筋細胞を低密度に播種することにより1細胞レベルで評価する実験系でも検証し、同様の現象が再現されることを確認した。 フラックスアナライザーを用いて通常培養におけるファブリー病患者由来iPS心筋のエネルギー基質を調べた。ファブリー病患者由来iPS心筋では脂肪酸の利用が低下し、グルコースの利用が亢進していることが示唆された。しかし脂肪酸利用低下の程度はごくわずかであり、これ以外にもグルコース枯渇下での収縮速度低下の原因が無いかどうかは、今後更なる検証が必要である。 また、ファブリー病における心病変の多様性に関わる遺伝的背景を探るため、ファブリー病患者24名から同意を得て遺伝子解析を施行した。遺伝子解析ではエクソーム解析を行い、全症例についてリファレンス配列との差異(variant)を抽出し、そのアレル頻度や病原性を、データベース検索により付加情報を取得する作業を、所属研究室において既に確立されている解析パイプラインを用いて施行した。今後心病変の重症度などの臨床情報と組み合わせて解析を進める
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ファブリー心筋症におけるエネルギー代謝異常の存在をiPS心筋細胞の実験系で、高密度播種の同期拍動系でも、低密度播種のシングルセルレベルでも確認することができた。 多くのファブリー病患者から遺伝子解析を行うことができ、臨床情報との組み合わせによりファブリー病患者における心筋症重症化に関わる因子を調べるための準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ファブリー心筋症におけるエネルギー代謝異常の機序解明のために、iPS心筋細胞モデルでのトランスクリプトーム解析を行うと共に、ゲノム解析情報・臨床情報から得られるファブリー心筋症進展に関わる可能性のある因子をiPS心筋細胞モデル等の基礎実験で検証することで研究を推進する。 このため引き続きファブリー病患者由来iPS心筋の培養系を維持する。 また、ファブリー病患者からの遺伝子解析を更に進めると共に臨床情報の拡充を行う。
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Causes of Carryover |
2019年度の最後にエネルギー代謝異常の機序を調べるために網羅的遺伝子発現解析のための予算を確保していたが、解析に必要なiPS細胞由来心筋の培養が不安定となり、必要なサンプルを容易できなかったため次年度使用額が生じた。 翌年度に細胞が準備できれば網羅的遺伝子発現解析を行う予定である。
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Research Products
(1 results)