2020 Fiscal Year Annual Research Report
心筋エネルギー代謝に着目したファブリー心筋症の病態解明
Project/Area Number |
19K23984
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藏本 勇希 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (50843794)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | Fabry病 / iPS細胞 / 心筋エネルギー代謝 / 遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はiPS細胞モデル等を用いたエネルギー代謝異常の解析と、ファブリー病患者のゲノム情報、臨床情報を用いてGLA遺伝子変異以外の遺伝的背景の臨床表現型との関連について解析を行った。 フラックスアナライザーを用いた解析にて、ファブリー病iPS心筋ではパルミチン酸添加時の酸化的リン酸化による酸素消費量の増加が健常モデルよりも低下していた。一方で解糖系による細胞外液酸性化の程度もファブリー病モデルで低下していた。これは患者由来iPS心筋だけでなくsiRNAによる正常iPS心筋のGLA遺伝子ノックダウンや、ラット新生仔心筋細胞のGLA遺伝子ノックダウンでも認められたた。GLA遺伝子ノックダウンによるファブリー病モデルは、解析時点で免疫染色上グロボトリアオシルセラミド(Gb3)の蓄積は認められないため、ファブリーモデルにおけるエネルギー代謝異常はGb3蓄積を介さずに、GLA遺伝子発現低下・GLA蛋白減少から直接的に起こっていることが示唆された。 ファブリー病心病変の多様性に関わる遺伝的背景を探るため、ファブリー病患者25名からのエクソーム解析データをリファレンス配列との差異(variant)を抽出し、そのアレル頻度や病原性を、データベース検索により付加情報を取得した。患者臨床情報より心筋症の進行を認める10例(進行群)と高齢になっても左室肥大以外の心筋症表現型を認めない3例(緩徐群)のvariantの特徴を調べたところ、心筋組織において発現が確認されている遺伝子上のvariantで、住民コホートにおけるアレル頻度が低く、疾患変異データベースから病原性variantが疑われるvariantを94個認めた。このうち18個のvariantに関しては、進行群でのアレル頻度が緩徐群や住民コホートでのアレル頻度よりも高いため、ファブリー心筋症の重症化に関わっている可能性が考えられた。
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