2019 Fiscal Year Research-status Report
マウス足底の組織透明化による汗腺および近傍の神経線維の網羅的解析手法の開発
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19K23989
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
飯田 忠恒 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 特任助教 (80844381)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 組織透明化 / 皮膚 / 発汗 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マウス足底の汗腺および神経線維について、透明化技術の最適化と画像解析システムを作成することにより、発汗障害をきたす疾患の汗腺および神経系の病態解明の基盤を築くことを目的としている。研究開始初年度である本年度(2019年11月より2020年3月まで)は、当初の計画通り「マウス足底の透明化・イメージング法の最適化」、「汗腺と神経線維の3次元的免疫染色法の確立」、「皮膚3次元画像の自動解析プログラムの作成」を行った。「マウス足底の透明化・イメージング法の最適化」については、皮膚の透明化にしばしば用いられるグリセロール溶液に加え、SeeDB2法、CUBIC法をマウス足底汗腺に施行して効果を比較し、マクロ観察ではCUBIC法での透明化処理が有効であることが示唆された。これらの検体に核染色、アクチン染色を施し共焦点顕微鏡で観察したところ、透明化しない場合に比べて深部観察能は改善するものの、汗腺全体を観察するには不足であることが判明した。そこで今後は、透明化した試料を二光子顕微鏡で観察することを試みる予定である。「汗腺と神経線維の3次元的免疫染色法の確立」に関しては、厚みを持った切片の染色においてアクチン染色・核染色が有効であること、神経線維の染色にPGP9.5やβ3-tubulinに対する抗体が有効であることが確認できた。今後は、汗腺全体に3次元的染色が可能かの評価を、イメージング法の開発と並行して行っていく。「皮膚3次元画像の自動解析プログラムの作成」では、別の研究にて撮影されたヒト皮膚汗腺および神経線維の共焦点顕微鏡画像を用い、3次元的に神経線維の密度評価をセミオートで行るプログラムを開発し、発汗障害部位と健常部位での差を検出した。今後は開発したプログラムをマウス汗腺に適応していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度(2019年)の計画は、「マウス足底の透明化・イメージング法の最適化」、「汗腺と神経線維の3次元的免疫染色法の確立」、「皮膚3次元画像の自動解析プログラムの作成」であり、いずれも計画通りの実験を施行した。ただし、研究者がこれまで中枢神経系、内耳、心臓等の他臓器で行ってきた各種透明化手法を皮膚に適応したところ、マクロ観察での良好な透明化具合に反して、共焦点顕微鏡下では十分な深部観察が難しいことが判明した。これは当初予期していなかったことであり、その原因の検討を行ったところ、皮膚では膠原繊維がスポンジ状に不規則かつ豊富に存在し、細胞成分には乏しいことが原因と推測された。研究代表者はこれまでも同様の状況を骨の透明化において経験しており、その際には共焦点顕微鏡よりも二光子顕微鏡での観察が有用であったことから、二光子顕微鏡を本研究でも導入する方針とした。ただし研究代表者の施設には共用の二光子顕微鏡がないため、研究協力施設を探し、他施設にて実験を行う段取りを整えた段階である。二光子顕微鏡での深部観察の改善が得られるかが今後の研究の焦点であるが、イメージング以外の点では当初の予定通りの研究を行えたと考えられるため、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の計画通り、「発汗障害モデルマウス」の汗腺の観察を行うことで、開発する手法の検証を行う。発汗障害モデルマウスとしては、まずアトロピン長期投与モデルおよび糖尿病マウスによる乏汗状態での構造変化を観察する予定で、現在研究施設の動物実験委員会に計画書を申請中である。また、当初は研究施設内共用の共焦点顕微鏡で観察する予定であったが、汗腺全体の3次元観察を目指し、他施設に協力を仰ぎ二光子顕微鏡での観察を行っていく予定である。ただし二光子顕微鏡によっても汗腺全体のイメージングが達成できなかった場合でも、現在の観察範囲でも十分に3次元的解析は行えるため、予定通り発汗障害モデルマウスでの検討を行っていく。本年度(2019年度)開発したヒト汗腺用の画像解析プログラムを発展させてマウスに適応し、さらに自動処理化による客観的な評価システムの構築を目指す方針である。本研究によりマウス足底汗腺の3次元的形態解析の基盤技術が確立されれば、発汗障害を呈する疾患のモデルマウスの確立や、新規の治療薬ないし治療方法の効果の判定に役立てていく予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度にマウス汗腺を含む切片作成のためマイクロスライサーを購入する予定であったが、観察用切片の作成方法を検討したところ、デルマパンチという比較的安価な医療機器がより適していることが判明したため、マイクロスライサーの購入費分が次年度使用額として生じた。2020年度には当初の計画にはなかった二光子顕微鏡の使用料金や追加実験用の試薬(透明化用試薬、染色用試薬)が生じるため、次年度使用額を利用する予定である。
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