2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K23994
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊地 晃一 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 非常勤講師 (10845259)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | TPL阻害剤 / 腸内細菌叢の変容 / PS産生亢進 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画書に記載した学術的な「問い」、即ち、1)糖尿病ではフェニル硫酸(PS)産生が亢進しているか、またそのメカニズムはなにか、2)TPLをターゲットとしてDKDの新規治療薬を探索する方法はなにか、3)DKDの進行予測マーカーとしてPSの有用性を確立するために何が必要か、に沿って順に研究実績を述べる。 問い1)に関して、我々は糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)と通常マウス(C57BL6)とを用いた比較実験から糖尿病マウスではPSの産生が亢進していることを明らかにした。さらにこれら2系統のマウスの糞便を用いたメタゲノム解析から腸内細菌叢が異なることを明らかにし、この腸内細菌叢の変化が糖尿病におけるPS産生亢進の要因の1つであることが示唆された。 問い2)に関して、我々は独自に17種類の化合物を合成し計画書に記載したアッセイ系を用いてTPL阻害効果を評価したところ、17種類中11種類で先行研究でTPL阻害剤として用いた2-AZA-Tyrosineよりも強い阻害効果を持つことは明らかにした。この11種類の中でも特にTPL阻害効果が強かった化合物1種類を用いて2次、3次スクリーニングを進めるとともにより強大な阻害効果を有する誘導体の合成に着手している。 問い3)に関して、我々は糖尿病患者において尿中PS濃度が腎機能低下、アルブミン尿増加を予測し得るかどうかを明らかにすべく本年度はUCARE studyのLCMS/MSによる尿毒素の測定を予定している保存尿検体(約650検体)の整理を行い、測定用サンプルの分注作業の準備を行った。さらに長期観察期間で見た糖尿病性腎臓病の発症・予後予測因子としてのPSの有用性評価のため、先行研究でベースラインとした年度から5年後の臨床データの収集作業を行い、大部分の収集を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績概要で述べた通り、問い1)については現時点で糖尿病ではPS産生が亢進していること、その亢進には腸内細菌叢の変化が関係している可能性があることまでを明らかにすることができている。今後、残りの研究期間で変化した腸内細菌叢について更に詳細な検討を行い、どの菌がPS産生亢進に寄与しているかを明らかにできると考えている。 問い2)については既にTPL阻害剤の候補化合物をスクリーニングで見出しており、今後、動物モデルを用いたVIVOレベルでの糖尿病性腎臓病治療効果の検証や更に強いTPL阻害効果を持つ誘導体の合成を進められると考えている。 問い3)について測定用の尿サンプルの整理は完了し分注作業を行うのみ、長期予後解析のためのベースラインから5年後の臨床データの収集も概ね完了しており、測定とデータ収集が完了次第、それらを用いた統計解析に移行できると考えている。 しかしながら、現時点での研究進捗状況は概ね順調を判断しているが所属研究機関では新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の流行に伴い、令和元年度末頃から都道府県を越えた研究者の移動が制限され、研究室での実験についても大幅な制限を受けている状況(令和2年4月現在)にあるため、今後の状況次第では当初の研究計画に遅れが生じる可能性があると考えている。この点を最後に申し添えておく。
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Strategy for Future Research Activity |
問い1)について、これまでの研究成果をもとにさらに糖尿病と正常個体での腸内細菌叢の比較を詳細に行いPS産生亢進に寄与している腸内細菌の特定、およびなぜ糖尿病ではPS産生が亢進するような腸内細菌叢の変化が起きるのかと、その予防策の解明を目指す。 問い2)について、これまでの1次スクリーニングで見出したTPL阻害剤候補物質の2次、3次スクリーニングを進めるとともに、候補物質の誘導体合成を行いさらに強いTPL阻害効果を持つ化合物の探索を行う。また、候補化合物を糖尿病モデルマウスや腎不全モデルマウスに投与し糖尿病性腎臓病の治療効果を検証する。 問い3)についてLCMS/MSを用いて尿サンプル中の尿毒素の測定と長期予後評価のためのベースラインから5年後の臨床データの収集整理を完了し、それらをもとに統計解析を進める。 問い1~問い3の成果をまとめ論文化を進める。
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Causes of Carryover |
本研究計画ではLCMS/MSを用いたヒトコホート症例約650症例の尿サンプル中尿毒素の測定と解析、また分注など測定のための準備作業に対して最も大きな支出を見込み予算を計上している。 当初、研究が最短で進んだ場合には当該年度中に分注や一部測定作業を開始出来ると見込んで、その予算を当該年度に計上していたが新型コロナウイルス感染症流行などの影響などもあり当該年度中にこれらに着手するまでに至らなかったため、次年度使用額が生じた。次年度はこれらの繰越も含めて当初の研究計画書に基づき研究を進め、かつ目的達成を目指す所存である。
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Research Products
(4 results)