2019 Fiscal Year Research-status Report
軟骨無形成症における特異的肥満と2型糖尿病罹患の関連の解明
Project/Area Number |
19K23996
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 誠 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (50625697)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 軟骨無形成症 / 2型糖尿病 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
軟骨無形成症はFGFR3シグナルの亢進が病態の先天性の骨系統疾患であり、その特異的な肥満と耐糖能の関連メカニズムは単純肥満のそれとは異なる。そこで、本研究では、全身でのFGFR3シグナルの亢進を来した軟骨無形成症のモデルマウスにおいて、脂肪分布の解析や耐糖能を解析することで、そのメカニズムの解明することを目的とする。また、同マウスより抽出した脂肪細胞や骨髄細胞の遺伝子や蛋白発現を解析することで、糖代謝における本疾患の特異的な細胞レベルでの特徴を明らかにすることも目指す。 具体的には、患者由来iPS細胞を用いて本症特異的な脂肪細胞の分化・機能的特性を示すとともに、軟骨無形成症モデルマウスを用いて、病態に関与すると予測される2-アミノアジピン酸と脂肪細胞・脂肪組織の形成や耐糖能との関連を解析していく。 2019年度は、3人の軟骨無形成症患者からそれぞれ由来する患者由来iPS細胞について継代・増殖し、実験に十分用いることの出来る細胞量を保存し得た(3細胞株)。そのうち1細胞株については、神経堤細胞に分化させたうえで細胞ソーティングを行い採取し、それを間葉系幹細胞に分化し、増殖・保存し得た。また、健常人由来iPS細胞から同様の方法で分化させた間葉系幹細胞についても、同様に十分な細胞量を増殖・保存し得た(3細胞株)。 軟骨無形成症モデルマウスについては、Fgfr3遺伝子のp.Gly347Arg変異(ヒトのFGFR3遺伝子のp.Gly380Arg変異と同等の変異)を相同組み換え法を用いてノックインしたモデルマウスの凍結胚の導入を決定し、これに伴い必要な遺伝子組換え計画および動物実験計画書を作成し申請した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
質的に良好な疾患iPS細胞の増殖および分化を確立することに比較的時間を要した。また、新型コロナウイルスにより、2020年3月頃から可及的に不急の実験を控える必要が生じたため、予定していたより進捗が遅れつつある。 また、モデルマウスについては、大阪大学医学部動物実験施設の改修工事に伴う飼育動物数の制約が厳しいことが2019年末頃から明らかになり、マウス導入が改修後にずれ込むことが不可避となりつつある。動物実験計画書の承認自体は近い将来に得られる予定だが、実際の導入には時間的な困難が予想される。
|
Strategy for Future Research Activity |
患者由来iPS細胞から分化誘導し得た間葉系幹細胞を用いて、脂肪細胞分化誘導を行い、Pparg、Fabp4などの脂肪細胞マーカー遺伝子、Oil Red O染色、アディポネクチン・レプチン分泌能、インスリン刺激による糖取り込み能を解析し、これらを健常人iPS細胞由来の間葉系幹細胞と比較することで、その特性を示す。また、FGFR3シグナル亢進との関連を明らかにすべく、疾患細胞へのFGF2アプタマー(FGFR3シグナル抑制剤)の投与、あるいは健常細胞へのFGFの添加を行い、FGFR3シグナル阻害が脂肪細胞の特性へ与える影響を明らかにする。 軟骨無形成症モデルマウスが導入されれば、骨髄または鼠径部脂肪組織から、骨髄間葉系細胞または間質血管細胞群をそれぞれ単離し、脂肪分化を比較検討することで、本症特異的な脂肪細胞の分化・機能的特性を示す。また、モデルマウスでの2-アミノアジピン酸の濃度を測定し、本症におけるその特異性を確認する。更に、2-アミノアジピン酸と耐糖能の関係を明らかにするため、その投与下での腹腔内ブドウ糖およびインスリン負荷試験を行うことで、その耐糖能への影響を示す。加えてFGFR3シグナルと2-アミノアジピン酸の関連を明確にすべく、FGFアプタマーが与える影響も解析する。単純性肥満とFGFR3シグナルおよび2-アミノアジピン酸の関連性(または独立性)を見る目的で、モデルマウスの高脂肪食栄養を行い、耐糖能への影響を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
使用額が計画より少なかった理由は、大阪大学医学部動物実験施設の改修に伴う導入動物数制限のため、実験動物導入に遅れが生じていることに大きな理由にある。また、交付が学会参加に間に合わなかったため、旅費への使用が一切なかったことも理由となった。次年度は可能な限り後半にキャッチアップするべく、動物実験の必要物品の事前準備を行う。また細胞を用いた実験ペースをあげていく。
|