2020 Fiscal Year Research-status Report
軟骨無形成症における特異的肥満と2型糖尿病罹患の関連の解明
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19K23996
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 誠 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (50625697)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 軟骨無形成症 / 2型糖尿病 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
軟骨無形成症はFGFR3シグナルの亢進が病態の先天性の骨系統疾患であり、その特異的な肥満と耐糖能の関連メカニズムは単純肥満のそれとは異なる。そこで、本研究では、全身でのFGFR3シグナルの亢進を来した軟骨無形成症のモデルマウスにおいて、脂肪分布の解析や耐糖能を解析することで、そのメカニズムを解明することを目的とする。また、同マウスより抽出した脂肪細胞や骨髄細胞の遺伝子や蛋白発現を解析することで、糖代謝における本疾患の特異的な細胞レベルでの特徴を明らかにすることも目指す。 具体的には、患者由来iPS細胞を用いて本症特異的な脂肪細胞の分化・機能的特性を示すとともに、軟骨無形成症モデルマウスを用いて、病態に関与すると予測される2-アミノアジピン酸と脂肪細胞・脂肪組織の形成や耐糖能との関連を解析していく。 2020年度は、前年度に引き続き、3人の軟骨無形成症患者からそれぞれ由来する患者由来iPS細胞について継代・増殖し、それぞれで神経堤細胞に分化させたうえで細胞ソーティングを行い採取し、間葉系幹細胞に分化し、増殖・保存し得た。それぞれのFGFR3変異はdirect sequence法で確認した。健常人由来iPS細胞から同様の方法で分化させた間葉系幹細胞についても、同様に十分な細胞量を増殖・保存しており、これで患者3細胞株、健常3細胞株の間葉系幹細胞を確立し得た。これらを用いて、脂肪細胞分化の分化培養について、脂肪滴形成を指標に最適な培養条件を検討している。 軟骨無形成症モデルマウスについては、Fgfr3遺伝子のp.Gly347Arg変異(ヒトのFGFR3遺伝子のp.Gly380Arg変異と同等の変異)を相同組み換え法を用いてノックインしたモデルマウスの凍結胚の導入を決定し、遺伝子組換え計画および動物実験計画書を作成し申請・承認を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
疾患および健常iPS細胞から、それぞれ神経堤細胞を経て間葉系幹細胞を樹立した。これらを用いて、脂肪細胞分化を効率的に行う培養系の最適条件を確立しつつあるが、新型コロナウイルスにより、2020年3月頃から可及的に不急の実験を控える必要が生じており、より有用な方法が確定していない状態である。 また、大阪大学医学部動物実験施設の改修工事が、当初予定よりも大幅に遅くなり、2021年冬となる見込みとなった。現在の仮設動物施設では、飼育動物数の制約が厳しいことと、導入後すぐに移転となるため再び凍結胚化する必要があるため、モデルマウスを用いた実験は改修を待たざるを得ない状態となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
患者および健常人由来iPS細胞から分化誘導し得た間葉系幹細胞を用いて、脂肪細胞分化誘導を行い、脂肪細胞マーカー遺伝子発現の解析、脂肪滴染色、、アディポネクチン・レプチン分泌能、インスリン刺激による糖取り込み能を解析し、その疾患特性を明らかとする。また、FGFR3シグナル亢進との関連を明らかにすべく、疾患細胞へのFGF2アプタマー(FGFR3シグナル抑制剤)の投与、あるいは健常細胞へのFGFの添加を行い、FGFR3シグナル阻害が脂肪細胞の特性へ与える影響を明らかにする。 軟骨無形成症モデルマウスを用いて、骨髄または鼠径部脂肪組織から、骨髄間葉系細胞または間質血管細胞群をそれぞれ単離し、脂肪分化を比較検討することで、本症特異的な脂肪細胞の分化・機能的特性を示す。また、モデルマウスでの2-アミノアジピン酸の濃度を測定し、本症におけるその特異性を確認する。 更に、2-アミノアジピン酸と耐糖能の関係を明らかにするため、その投与下での腹腔内ブドウ糖およびインスリン負荷試験を行うことで、その耐糖能への影響を示す。加えてFGFR3シグナルと2-アミノアジピン酸の関連を明確にすべく、FGFアプタマーが与える影響も解析する。単純性肥満とFGFR3シグナルおよび2-アミノアジピン酸の関連性(または独立性)を見る目的で、モデルマウスの高脂肪食栄養を行い、耐糖能への影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスにより、2020年3月頃から断続的に可及的に不急の実験を控える必要が生じていること、および大阪大学医学部動物実験施設改修の大幅な遅れによるモデルマウス導入が遅れていることから、実験に必要な助成金の使用が遅れたため。可及的速やかな実験の実施の中で使用していく。
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