2019 Fiscal Year Research-status Report
徐放化局所麻酔薬の癌細胞増殖に対する影響ならびに腫瘍免疫に対する効果の検討
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19K24005
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
鈴木 景子 (原口) 群馬大学, 医学部附属病院, 医員 (50846897)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 局所麻酔薬 / 腫瘍細胞 / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
手術麻酔は鎮静のために吸入麻酔薬や静脈麻酔薬を使用するが、鎮痛はオピオイドや局所麻酔薬を使用する。これまでの報告により吸入麻酔薬やオピオイドを使用した群では、静脈麻酔薬や局所麻酔薬を使用した群と比較して癌の長期予後が良くないことが示された。これは、吸入麻酔薬により癌の再発や転移を促進する遺伝子の発現が促進されることやオピオイドによって腫瘍免疫に重要なNatural killer (NK)細胞の活性を抑制することなどが原因と考えられている。 一方、区域麻酔を併用するとオピオイドの使用量が相対的に軽減するために癌の予後を改善することが報告されている。さらに区域麻酔に用いられる局所麻酔薬そのものが細胞増殖や細胞死に関与することが示唆されているが、詳細なメカニズムは明らかにされていない。 そのため、本研究は局所麻酔薬により腫瘍細胞の増殖や免疫応答がどのように修飾されるのか分子レベルでメカニズムを解明することを目的としている。 まず癌化した細胞株の培養を開始できる実験環境を整え、実際に数種類の癌化細胞株の培養を開始した。癌細胞株に臨床で多用されている局所麻酔薬を投与したところ、細胞の増殖が抑制されることが確認できた。さらに細胞増殖抑制は局所麻酔薬の濃度依存的であることが示された。そのため、今後は局所麻酔薬が腫瘍細胞や腫瘍免疫を担う細胞に対しどのような効果を示すのか、分子レベルで解明できることが期待できる。得られた研究成果により臨床における麻酔方法において、局所麻酔薬を用いた区域麻酔の併用が癌の予後に重要な影響を与えるものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞株の培養を行うために、CO2インキュベーターのセットアップ、培地、血清等を購入した。血清の品質チェックも行い、実験に使用予定の癌細胞株が培養できるか確認し、数種類の癌細胞株を培養を開始した。これら細胞株に臨床において多用されている局所麻酔薬を投与し、細胞の増殖能への影響を観察したところ、局所麻酔薬の濃度依存的に増殖が抑制されることがコロニーフォーメーションアッセイ法により確認できた。上記の現象は数種類の癌細胞株において確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
次の段階として、細胞増殖が細胞周期のどの段階で抑制されるかをフローサイトメトリー法により解析する。また、局所麻酔薬を作用させた際に発現が変化する遺伝子を検索する。そのため、マイクロアレイ法等によりコントロールと比較し発現が変化している遺伝子を検索する。さらに、局所麻酔薬を実験動物に経静脈的または徐放薬等により作用させた場合にNK細胞など腫瘍免疫に重要な細胞の活性が変化するかどうか評価していく。
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Causes of Carryover |
初年度の研究費交付決定が年度後半であったため、研究開始が年度後半からになった。そのため、初年度は研究費の使用開始が遅くなり繰り越し金が生じた。繰り越した研究費は次年度のマイクロアレイなどスクリーニング費用や動物実験等の費用に使用予定である。
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Research Products
(1 results)