2020 Fiscal Year Research-status Report
徐放化局所麻酔薬の癌細胞増殖に対する影響ならびに腫瘍免疫に対する効果の検討
Project/Area Number |
19K24005
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
鈴木 景子 (原口景子) 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (50846897)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 局所麻酔薬 / 癌細胞増殖抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌は本邦における死因のトップであり、高齢化に伴い患者数は増加している。治療は外科的療法、化学療法や分子標的療法、放射線療法など様々であるが、依然として外科的療法が重要な治療法である。しかし手術は生体にとって大きな侵襲であり、術後、炎症反応が亢進し、免疫能が抑制されるsurgical stressと言う病態が知られている。近年、手術の麻酔方法がsurgical stressの病態に関与し、麻酔薬が癌の生命予後に影響していることが報告されているが、その分子的なメカニズムに関しては不明な点が多い。 局所麻酔薬はナトリウムチャネルを非特異的に阻害し、神経細胞の活動電位の発生を抑制することで鎮痛作用を発揮する。一方、生体内にはG蛋白共役受容体などリガンドが不明なオーファン受容体が多数存在し、癌細胞ではEpidermal growth factor (EGF)に代表される増殖因子などの受容体の変異が認められる。そのため、局所麻酔薬はナトリウムチャネルのほか、様々な受容体に作用し、細胞内シグナル伝達を変化させる可能性がある。数種類の癌細胞株を局所麻酔薬リドカイン投与下に培養し、colony formation assayを用いて細胞増殖能を検討したところ、リドカイン濃度依存的に細胞増殖が抑制された。そのため、次世代シークエンサーを用い、局所麻酔薬投与後、癌細胞増殖に関与する遺伝子、並びにシグナル伝達を同定し、局所麻酔薬が癌細胞の増殖に与える影響を分子レベルで解明することを目標とする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
局所麻酔薬を作用させた癌細胞株よりRNA integrity number >8.0の高品質のRNAを調製し、cDNAライブラリー作成を行った。、NextSeq500 High Output Kit v2.5を用いてIllumina NextSeq500にて43bp pair-end sequencingを施行した。シークエンスのクオリティースコアは95.88(目標値≧75)、クラスター密度は178-186(目標値170-220)、phiX Aligned% 1.07(目標値1前後)と遺伝子発現プロファイル解析に十分なクオリティであった。Spliced Transcripts Alignment to a Reference (STAR)_2.5.3aソフトウエアを用いてhuman genome 19 (hg19)に対してアライメントを行い、RSEM 1.3.3にてCount dataおよびTPMを得た。正規化、発現変動遺伝子の抽出にはTCC-iDEGES-DESeqを用い、q<0.05を有意とし、網羅的な遺伝子プロファイルを得た。また、pathway解析(Integrity pathway analysis: IPA)を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
局所麻酔薬により発現が変化している遺伝子をターゲットとし、qRT-PCRを行い遺伝子発現が実際に変化していることを確認する。また、同時に遺伝子プロファイルのpathway解析を行い、局所麻酔薬が癌細胞の増殖抑制に関与するシグナル伝達を同定する。同定したシグナル伝達に関与する遺伝子のRNAi実験を行い、局所麻酔薬による癌細胞増殖抑制効果が阻害されることを確認する。さらに局所麻酔薬の受容体であるナトリウムチャネルの発現レベルと腫瘍抑制効果に関連性があるかどうかをMTTアッセイ等を用い、癌細胞の増殖能を調べることにより評価する。以上の実験により局所麻酔薬が癌細胞増殖に関与する分子メカニズムが解明できると期待できる。
|
Causes of Carryover |
追加実験費用と論文投稿のための校正費として使用予定。
|