2019 Fiscal Year Research-status Report
透析用動静脈瘻の閉塞ハイリスク群に対する内膜肥厚制御
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19K24006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊佐治 寿彦 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40779790)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 動静脈瘻 / 内膜肥厚 / 性差 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画よりやや遅れているが、研究計画に即した実験系を徐々に確立しつつある段階である。マウス動静脈瘻モデルは、C57BL/6マウスに対して大動脈-下大静脈瘻を作成することで安定的に供給されており、術後の初期成功率、死亡率、長期予後も安定している。また、術後経過中のエコーによる評価も適切に行なわれている。(1)動静脈瘻の成熟における性差の研究。我々の共同研究施設において、オス及びメスのマウス動静脈瘻モデルの成熟過程を比較した。動静脈瘻の成熟度に差はないもののメスにおいて開存率が劣り、静脈における層状流の流速とずり応力が低下していた。メスの動静脈瘻では炎症や層状流に関与するKLF2、eNOS、VCAM-1の発現が低下していた。結論として、動静脈瘻の発達期間における血行力学的な変化が、女性におけるブラッドアクセスとしての動静脈瘻の有用性の低下に重要な役割を果たしていると述べた。この結果を踏まえて、メスの卵巣的摘出後、あるいはさらにエストロゲン補充療法を行ったものに対して動静脈瘻を作成し、術後の動静脈瘻の成熟度を比較している。(2)糖尿病モデルにおける動静脈瘻の成熟の研究。マウスの動静脈瘻作成3週間前に50mg/kgストレプトゾトシンを投与してI型糖尿病マウスモデルを作成し、従来の方法で動静脈瘻を作成し、術後の成熟度を評価した。当初、ストレプトゾトシン投与後に尿量増多のため脱水となり死亡する例や、手術侵襲に耐えられず死亡する例が多かったが、徐々に生存率が改善し、成熟度のデータが得られるようになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)マウスの動静脈瘻における性差の比較の研究では、一定の成果が得られ、共同研究施設において論文が発表されるに至った。これを踏まえて、メスの卵巣摘出モデル、あるいはさらにエストロゲン補充療法を行ったものに対して動静脈瘻を作成し、術後の動静脈瘻の成熟度の比較研究を遂行している。現在、卵巣摘出による閉経モデルの手技確立にやや時間がかかっている。具体的には、卵巣摘出後あるいは動静脈瘻作成後に死亡するケースが多く、成熟度の評価まで到達させるが困難である。(2)糖尿病モデルにおける動静脈瘻の成熟の研究において、I型糖尿病マウスモデルを作成し、従来の方法で動静脈瘻を作成し、コントロール群と比較して術後の成熟度を評価した。糖尿病群では術後経過中の死亡を多く認めた。生存例において、動静脈瘻の開存率を比較したが、有意な差は認めなかった。術後21日、42日の動静脈瘻を採取し、中枢側静脈の内膜肥厚の程度をVEG染色で評価した。糖尿病群はコントロール群に比べて内膜が熱くなる傾向にあるものの統計学的な有意差は認めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)動静脈瘻成熟における性差の比較研究では、マウス卵巣摘出モデル作成の術後生存率の向上につとめる。具体的には、卵巣摘出術を施行する週齢をふりわけ、動静脈瘻モデル作成手術の術後生存率が高く、卵巣摘出効果も高い週齢を探る。また手技に関してはビデオジャーナルや過去の論文を参考に向上をはかる。モデル作成手技が確立されたら、卵巣摘出群、卵巣摘出+エストロゲン補充群、コントロール群に分けて、動静脈瘻の成熟を比較し、性ホルモンの静脈内膜肥厚に対する効果を検討する。また、オスマウスを使用し、アンドロゲン受容体ノックアウトマウスとコントロール群の動静脈瘻の成熟を比較する。(2)糖尿病の動静脈瘻発達に対する影響を評価する研究では、モデル作成手技を更に向上させ、動静脈瘻作成後の生存率を安定させる。具体的には術中術後の保温、脱水、環境汚染に留意する。その上で、内膜肥厚および動静脈瘻開存率をコントロール群と糖尿病群で比較する。また、終末糖化産物RAGEに着目し、これが活性化するERK,Akt1などの細胞増殖因子を蛍光免疫染色を用いて比較する。
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Causes of Carryover |
実験の準備期間、計画期間に時間を要し、実際に物品を購入開始した時期が遅れたため。全研究期間中に、申請時に申告した動物実験を含めた研究を完遂する予定であり、直接経費いずれも次年度内に使用予定である。
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[Journal Article] Murine Model of Central Venous Stenosis using Aortocaval Fistula with an Outflow Stenosis.2019
Author(s)
Toshihiko Isaji, Shun Ono, Takuya Hashimoto, Kota Yamamoto, Ryosuke Taniguchi, Haidi Hu, Tun Wang, Jun Koizumi, Toshiya Nishibe, Katsuyuki Hoshina, Alan Dardik
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Journal Title
Journal of Visualized Experiments
Volume: 149
Pages: e59540
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Inhibition of the Akt1-mTORC1 Axis Alters Venous Remodeling to Improve Arteriovenous Fistula Patency.2019
Author(s)
Guo X, Fereydooni A, Isaji T, Gorecka J, Liu S, Hu H, Ono S, Alozie M, Lee SR, Taniguchi R, Yatsula B, Nassiri N, Zhang L, Dardik A.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 9(1)
Pages: 11046
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Long-term outcomes of vein grafts used in distal bypass for critical limb-threatening ischemia2019
Author(s)
Isaji T, Hanada K, Matsuura S, Okata S, Ohashi Y, Sano M, Miyahara K, Fukuhara N, Akai T, Takayama T, Hoshina K
Organizer
International Union of Angiology, Japan Chapter Meeting
Int'l Joint Research