2019 Fiscal Year Research-status Report
便プロテオーム解析を用いた小児外科疾患の原因解明と新規治療法の探索
Project/Area Number |
19K24007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 栄一郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40623327)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 便 / プロテオーム解析 / 小児外科 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎便性腹膜炎は、開腹時の所見によって、線維性癒着型(fibroadhesive type)、嚢胞型(cystic type)、汎発型(generalized type)の3病型に分類されるが、時に分類に苦慮する症例を経験することがある。2019年度、3病型に分類し難い胎便性腹膜炎に起因したMeconium hydroceleを経験し、その内容液をプロテオーム解析で分析した。同一患児から採取した検体として, 胎便性腹膜炎に起因したMeconium hydroceleの内容液(n=1)と回腸ストーマ造設後のストーマ排便(n=1), ストーマ閉鎖後の飢餓便(n=1)及び退院後の自然排便(n=1)の4検体, また, 他児から採取した検体として, 出生直後の胎便(n=4:正出生体重児1例(37週5日, 3,123g), 低出生体重児2例(34週4日, 双胎, 1,959g及び2,041g), 超低出生体重児1例(23週0日, 449g), 乳児の自然排便(n=3)の7検体, 合計11検体をプロテオーム解析で分析し比較検討した。その結果、Meconium hydroceleの内容液中の, 約4000種類のヒト由来タンパク質が同定でき, 解析した全検体のクラスター分析の結果, 本症例のMeconium hydroceleの内容液は胎便成分に近く, なかでも在胎23週で出生した超低出生体重児の胎便成分に類似していた。以上から、本症例は, 在胎23週に近い時期に胎便性腹膜炎を発症した可能性があると考えた。プロテオーム解析を用いて, Meconium hydroceleの内容液や胎便性腹膜炎の腹水を分析することで, 胎便性腹膜炎の発症時期の推定やタンパク成分に基づいた新たな病型分類の提唱に繋がる可能性があり, 今後も継続した症例の蓄積と解析が重要と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、収集できた症例を使って、ヒト便プロテオーム解析を繰り返し行い、ヒト便プロテオーム解析技術の精度を高めることができた(研究成果:Optimization of data-independent acquisition mass spectrometry for deep and highly sensitive proteomic analysis)。また、共同研究機関との連携はよく、サンプル収集から解析に到るまで概ね調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
出生時体重が小さな超低出生体重児(EVLBWI:出生体重<1,500)は、出生後の消化管トラブルにより人工肛門造設術が必要となることが多いが、人工肛門閉鎖術の時期については、一定した見解が存在しない。そこで、人工肛門造設術を施行された児の人工肛門からの排液と人工肛門閉鎖術後の肛門からの排便の便プロテオーム解析を行い、それぞれを比較検討することで、人工肛門閉鎖術が果たす生理学的効果の検討を行う予定にしている。
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Causes of Carryover |
2019年度は、予定していたサンプルのプロテオーム解析が十分行えなかった為、次年度使用額が生じた。次年度は、既に収集できているサンプルのプロテオーム解析を継続して行い、その結果を学会発表する予定である。
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