2020 Fiscal Year Annual Research Report
抗炎症作用を有する脂質メディエーターの肺移植領域への応用可能性
Project/Area Number |
19K24011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 里奈 京都大学, 医学研究科, 助教 (80847517)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 虚血再灌流障害 / 肺移植 / 抗炎症性脂質メディエーター |
Outline of Annual Research Achievements |
肺移植後の虚血再灌流肺障害の予防・治療は、肺移植後の成績向上のために必須である。近年同定された、Arachidonic Acid、Eicosapentaenoic Acid、Docosahexaenoic acidから生成され抗炎症作用を有する脂質メディエーター(Specialized pro-resolving mediator; SPM)は、種々の疾患モデルで過度な炎症による臓器障害を抑制すると報告されている。虚血再灌流肺障害への保護効果を検討した。ラットの肺門を一定時間クランプして換気血流を遮断したのちにクランプを開放、換気血流を再開して温虚血再灌流肺障害を生じさせるラット肺門クランプモデルにおいて、これまでSPMの受容体として報告されている受容体のうち、FPR2のupregulateが障害肺内で起こっていることを明らかにした。そこでFPR2受容体に作用すると報告されている、Aspirin-triggered Resolvin D1(AT-RvD1)と、Aspirin-triggered Lipoxin A4(AT-LXA4)を上記ラット肺門クランプモデルにおいて再灌流直後にラットに経静脈的に投与した。気道内圧や肺コンプライアンス、酸素化能などの障害肺の生理学的指標は、AT-RvD1投与群とAT-LXA4投与群で有意に改善した。この解析をさらにすすめ、AT-RvD1投与群・AT-LXA4投与群において、肺水腫の改善、肺組織中の出血所見の軽減、肺組織中に浸潤する好中球の減少、炎症性サイトカインの減少を認め、AT-RvD1とAT-LXA4は温虚血再灌流肺障害において、肺障害を軽減すること、抗炎症効果をもたらすことを確認した。本所見の肺移植領域への応用可能性を検討するため、マウス肺移植モデルの確立と実験条件の最適化を継続した。
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