2019 Fiscal Year Research-status Report
CRISPR/Cas9を用いた子宮体癌におけるエストロゲン関連受容体伝達機構解明
Project/Area Number |
19K24034
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
古株 哲也 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (80848490)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | エストロゲン関連受容体 / エストロゲン受容体 / 子宮体癌 / 化学療法抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮体癌細胞株(HEC-1A、KLE、Ishikawa)をpaclitaxelおよびcisplatin添加培地で培養し、低濃度より徐々に濃度を上げていくことで最終的にpaclitaxel 10nM、cisplatin 150 uMに対する化学療法抵抗性細胞株(以下、抵抗性細胞株)を樹立した。 まず初めに抵抗性獲得を確認するため、正常細胞株と抵抗性細胞株を用い、WST-8 assayでpaclitaxel(0-15nM)およびcisplatin(0-350uM)による細胞増殖抑制効果を検証した。各々の薬剤に対し抵抗性細胞株では細胞増殖抑制効果が有意に低下していることを確認した。 次にRT-PCTを用い、抵抗性細胞株においてERRα、HIF-1α、c-Mycの増加とmiR-9の低下を示した。HEC-1Aの抵抗性細胞株を用いたwestern blotting法ではERRαだけでなく、c-Mycや多剤耐性に関与するMDR1、抗アポトーシスに関わるXIAPやBcl-2、さらには細胞増殖に関わるAKTも増加していることを明らかにし、抵抗性細胞株が薬剤耐性を獲得すると同時にアポトーシス抵抗性や腫瘍進展促進的変化を伴う可能性を示した。 またMDR1はmiR-9に制御されるが、ERRαはmiR-9を抑制するとされる。正常細胞株にERRα強発現することでmiR-9の低下が、MYCをノックダウンすることでmiR-9の増加が、またERRαのinverse agonistであるXCT790でmiR-9の一部が低下することをRT-PCRを用い示し、MDR1がERRαに制御されうることを明らかにした。ERRαが薬剤抵抗性を制御しうることが示されたことから、XCT790を抗癌剤に併用することで薬剤感受性が改善されることをWST-8を用いて確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学療法抵抗性細胞株作成においてKLEが他の細胞株と比較し腫瘍増殖速度が遅く、薬剤に敏感に反応することから、必要な濃度に達するまでに慎重な取り扱いが必要で、想定以上の時間を要した。またCOVID19の影響で研究業務そのものに対し、人的・物資的制限が起こった。 その一方で、治療抵抗性細胞株作成後では抵抗性細胞株の特性の評価や、細胞増殖試験、治療抵抗性獲得の機序、そしてERRαによる制御機構の解明、抗アポトーシスや腫瘍進展に関わる伝達系への影響などほぼ予定通りに検証できている。 上記理由から研究の進歩状況はおおむね順調と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在得られている結果は一部の細胞株に限定されているため、今後全ての抵抗性細胞株で治療抵抗性獲得の機序を解明する。また単一薬剤への治療抵抗性が多剤抵抗性を獲得することが知られており、複数種の抗癌剤を用いた感受性への差を検証する。 次にERRαによるそれらの制御メカニズムを評価すると同時に、抵抗性細胞株における抗アポトーシスに関わるタンパク発現や腫瘍進展に関わるPI3K/AKT/mTOR pathway、さらにはその下流への影響を詳細に検討する。 今回作成した抵抗性細胞株はエストロゲン受容体(ER)の発現レベルが異なることから、各々の抵抗性細胞株から得られる結果が異なることが予想される。加えてエストロゲン存在下、非存在下における反応の違いを検証することでERとERRの間に存在する複雑なクロストークを解明する糸口となる。 その後CRISPR/Cas9システムを用いてERRを標的とした遺伝子導入を行うことで抗腫瘍効果を検証し、最終的にはin vivoで抗腫瘍効果を検証する。具体的にはヌードマウスを用いてERRノックアウト細胞株移植xenograftを作成し、生体内での抗腫瘍効果を検証する。摘出腫瘍は細胞増殖、アポトーシス、血管新生を免疫組織化学染色にて評価する。
|