2021 Fiscal Year Research-status Report
Identifying molecular mechanisms and peripheral biomarkers of cognitive impairment in offspring from diabetic mother (ODM)
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19K24039
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
佐々木 徹 東京医科大学, 医学部, 講師 (30421001)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 母体耐糖能異常 / 認知機能障害 / 末梢血中バイオマーカー / トランスクリプトーム解析 / GLP-1受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠中の母体耐糖能異常は児(Offspring of Diabetic Mother : ODM)に認知機能障害をもたらすことが知られているが、その分子生物学的機序は明らかでなく、早期医学的介入を可能とするバイオマーカーも同定されていない。本研究において、応募者はSTZ誘発糖尿病合併妊娠モデルマウスを作成し、ODMにおける学習障害を複数のNeurobehavioral testにて確認した。さらに認知機能に関与する前頭前野大脳皮質にGLP-1受容体の特異的発現があることを見出した。また、STZ誘発糖尿病合併妊娠モデルマウスにGLP-1受容体アゴニストを投与し、ODMに対し間接的に認知機能を改善することを確認した。引き続きGLP-1受容体アゴニストがODMの学習障害に対する新規治療薬となり得るかの検証を行う予定である。 また、ODMの学習障害に対する出生早期からの医学的介入を可能とする末梢血中の新規バイオマーカーを同定すべく、白血球の遺伝子発現に着目し、T細胞、B細胞、単核球の3種類のサブタイプに対しRNA-sequencing(RNA-seq)によるトランスクリプトーム解析を行った。これまでに正常マウス12例、ODMマウス8例から末梢血中白血球を採取し、フローサイトメーターにて各サブタイプにソートし、それぞれにRNA-seqにてトランスクリプトーム解析を行った。今後これらの遺伝子発現データを用いて変動遺伝子(DEGs)解析を始め、Gene Ontology解析などのDown Stream解析を行う。さらに機械学習プログラミングを用いて、DEGsとAccerelated Rotarod testから得られた運動学習能力の指標であるLearning Indexとの相関性を評価し、特異的な新規バイオマーカーとなり得る候補遺伝子を同定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに本研究ではSTZ誘発糖尿病合併妊娠モデルマウスにGLP-1受容体アゴニストを投与し、ODMに対し間接的に認知機能を改善することを確認した。具体的には母体へBiotin conjugated GLP-1 Amideを投与し、胎盤の一部においてGLP-1受容体の発現があることや胎児へのGLP-1 Amideの移行が非常に少ないことを確認した。さらに、母体にGLP-1受容体アゴニストを投与したところ、ODMの認知機能障害が改善したため、この機序としては胎盤を介したGLP-1受容体アゴニストの直接的効果ではなく、母体インスリン抵抗性の改善、サイトカイン産生抑制、神経栄養因子の関与など間接的な機序が存在する可能性が高いものと思われた。引き続きGLP-1受容体アゴニストがODMの学習障害に対する新規治療薬となり得るかの検証を行う予定である。 また、機械学習プログラミング(randomForest analysis)を用いて、末梢血白血球における発現変動遺伝子とAccerelated Rotarod testから得られた運動学習能力の指標であるLearning Indexとの相関性を評価し、さらに精度を高めるためにAIを用いた学習障害の予測モデルを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
母体にGLP-1受容体アゴニストを投与したところ、ODMの認知機能障害が改善したため、この機序としては胎盤を介したGLP-1受容体アゴニストの直接的効果ではなく、母体インスリン抵抗性の改善、サイトカイン産生抑制、神経栄養因子の関与など間接的な機序が存在する可能性が高いものと思われた。これらの治療効果をもたらし得る機序やその他の可能性に関して検証を行い、引き続きGLP-1受容体アゴニストがODMの学習障害に対する新規治療薬となり得るかの確認行う予定である。また、OMDにおける学習障害の程度を反映する特異的な新規バイオマーカーとしての末梢血中白血球のトランスクリプトーム解析に関しては米国ワシントンDCのChildren’s National Medical Centerにて正常マウス12例、OMDマウス8例から末梢血中白血球を採取し、フローサイトメーターにてT cell、B cell、Monocyteの3種類のサブタイプにソートし、それぞれRNA-seqにてトランスクリプトーム解析を行った。これらの遺伝子発現データとAccelerated Rotarodtestから得られた運動学習能力の指標であるLearning Indexとの相関性に関して、AIを用いたOMDにおける運動学習障害の予測モデルを構築した。今後さらに予測モデルの精度を高めるために症例の追加を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ禍での臨床業務の負担増から本研究の進捗も遅延気味である。母体にGLP-1受容体アゴニストを投与したところ、ODMの認知機能障害が改善したため、この機序としては胎盤を介したGLP-1受容体アゴニストの直接的効果ではなく、母体インスリン抵抗性の改善、サイトカイン産生抑制、神経栄養因子の関与など間接的な機序が存在する可能性が高いものと思われた。これらの治療効果をもたらし得る機序やその他の可能性に関して検証を行い、引き続きGLP-1受容体アゴニストがODMの学習障害に対する新規治療薬となり得るかの確認行う。また、OMDにおける学習障害の程度を反映する特異的な新規バイオマーカーとしての末梢血中白血球のトランスクリプトーム解析に関しては米国ワシントンDCのChildren’s National Medical Centerにて正常マウス12例、OMDマウス8例から末梢血中白血球を採取しRNA-seqにてトランスクリプトーム解析を行った。これらの遺伝子発現データとAccelerated Rotarodtestから得られた運動学習能力の指標であるLearning Indexとの相関性に関して、AIを用いたOMDにおける運動学習障害の予測モデルを構築した。今後さらに予測モデルの精度を高めるために症例の追加を行う。
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