2019 Fiscal Year Research-status Report
内耳障害における蝸牛神経の髄鞘制御メカニズムの解明
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19K24052
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
栗岡 隆臣 北里大学, 医学部, 講師 (30842728)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 難聴 / 蝸牛神経 / 髄鞘 / シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
耳栓を用いた伝音難聴動物モデル(8週齢マウス)により、聴覚刺激が髄鞘化に及ぼす影響について検討した。動物は、耳栓挿入動物を耳栓(+)群、耳栓未挿入動物を耳栓(-)群、1ヶ月の耳栓挿入後に1ヶ月の耳栓解除をした耳栓(+/-)群の3群に分けた。 聴力閾値では、耳栓挿入では耳栓未挿入と比較して、有意な聴力閾値の上昇を認めた。続いて、耳栓解除を行った耳栓(-)群、耳栓(+)群、耳栓(+/-)群の聴力閾値をそれぞれ測定したところ、いずれの周波数でも3群間で有意差は認めなかった。しかし、耳栓(+)群のABRのⅠ波振幅は耳栓(-)群と比較して、有意に低下していたが、耳栓(+/-)群では振幅は回復を示した。ABRのⅠ波潜時も同様に、耳栓(+)群では有意に延長しており、耳栓(+/-)群で回復傾向を認めた。有毛細胞は、いずれの3群においても有意な有毛細胞死は観察されなかった 。らせん神経節細胞はいずれの群でも生存が確認でき、3群間において神経密度に有意差を認めなかったが、神経サイズは耳栓(+)群で有意に小さく、耳栓(+/-)群で回復を示した。さらに、蝸牛神経髄鞘について検討したところ、耳栓(+)群で有意に脱髄を認め、特に太い神経で脱髄所見が著明であったが、耳栓(+/-)群で再髄鞘化を示した。最後に、内有毛細胞と蝸牛神経接合部のシナプスについて検討したところ、シナプスマーカー数は耳栓(+)群の16, 32 kHz領域で有意に減少し、耳栓(+/-)群で回復を示した。 伝音難聴では聴力閾値や有毛細胞・神経の生存には影響を及ぼさないが、ABRのⅠ波振幅の低下や潜時延長を来し、蝸牛神経の機能低下や神経伝導速度の低下を来した。組織学的には蝸牛神経の狭小化、神経脱髄と蝸牛神経のシナプス障害を認め、難聴解消1ヶ月後には回復傾向を示したことから、神経活動依存性に制御されている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蝸牛神経の髄鞘化が聴覚刺激による神経活動性に依存していることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
聴覚刺激による神経活動性がどのような神経シグナルにより制御されているのかを同定する。 内耳障害後の蝸牛を採取し、HDAC(histone deacetylase:ヒストン脱アセチル化酵素)活性やFGF(Fibroblast growth factor:線維芽胞増殖因子)シグナル、もしくはERKシグナルの発現量と発現部位をWBやIHCにより解析する。さらに、内耳障害モデルにHDAC阻害剤もしくはFGF/ERK阻害剤を全身投与し、聴力や髄鞘の変化について解析する。
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Causes of Carryover |
(当該助成金が発生した状況) 2019年度に、難聴に伴う内耳の形態学的変化の分析を行い、その結果を基に神経シグナルの解析を行う予定であったが、現在も解析の途中である。一部のシグナル解析を翌年度に行うこととしたため、未使用額が生じた。 (翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画) このため、難聴に伴う神経シグナルの変化と髄鞘制御についてさらなる研究を次年度も引き続き行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(6 results)