2019 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌腹腔内播種の新規治療戦略:腹腔内免疫抑制メカニズムの解明と臨床応用
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19K24054
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
植野 さやか 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 訪問研究員 (80848937)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 腹腔内免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マウスモデルを用いた先行研究で、腹腔内で免疫抑制性マクロファージを誘導する因子として同定されたタンパクAの、ヒト卵巣癌における機能を検証し、タンパクAを標的とした治療薬を同定することを目的としている。 本年は、卵巣癌腹水検体および血清検体がバイオバンクに登録されている症例について、臨床進行期・化学療法への応答・予後に関する情報を収集した。また、比較対象として、卵巣境界悪性腫瘍および良性腫瘍で腹水が貯留していた症例についても、バイオバンクへの検体保存に同意を得られるよう努めた。 次に、腹水中のタンパクAの発現を調節する因子を探索した。まず、タンパクAが高発現しているマウス卵巣癌高転移株(ID8GO2)と親株(ID8G)のマイクロアレイデータを用いて、wPGSA法を用いて、遺伝子制御に関わる複数の転写因子候補を同定した。予測された転写因子に対する阻害剤をID8GO2細胞に投与し、タンパクAの発現を解析した。その結果、タンパクAの発現に関与する可能性のある1転写関連因子を同定することができた。この因子は、ヒストン修飾に関与する因子であったため、さらに他のヒストン修飾因子阻害剤を用いて、タンパクAの発現に与える影響を解析した。 最後に、卵巣癌手術検体を用いて、3次元培養を試みた。当初予定していた方法では、がん細胞自体の三次元培養は可能であったが、免疫細胞も内在させた状態での培養が困難であった。培養方法については、今後更なる検討を重ねていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はタンパクAの発現制御機構および候補薬剤について、予定以上の成果が得られた。一方、免疫細胞を含めた三次元培養については、手法についてさらなる検討が必要である。また、バイオバンクにすでに保存されている検体に加え、前向きに検体収集を継続していたため、まだタンパクAの発現量の測定に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 本年度に臨床情報が収集できた検体を用いて、タンパクAの発現量を測定する。また、タンパクAの発現量と臨床情報との相関について、解析を行う。(2) 同定できた転写関連因子に対する阻害剤を用いて、薬剤のin vivoあるいはex vivoでの効果を検証する。(3) 免疫細胞を含めた、腫瘍組織の三次元培養について、更なる検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
腹水および血清検体の収集を前向きに継続したため、タンパクAの測定を次年度に延期した。このことに伴い、予定していた学会発表に至らず、次年度に延期することとした。次年度使用額は、本年度予定していた上記2項目のために使用する予定である。
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