2019 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経原発リンパ腫に対するホウ素中性子捕捉療法の橋渡し研究とプロトコール立案
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19K24055
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
竹内 孝治 大阪医科大学, 医学部, 非常勤医師 (40804109)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | BNCT / malignant lymphoma / 悪性リンパ腫 / BPA / PET |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者所属施設では以前から、難治性悪性脳腫瘍の根治をめざし、腫瘍細胞選択的粒子線治療とされるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)による治療に積極的に取り組んできた。BNCTはその後の発展的研究と技術的進歩によって、世界初の加速器中性子源の開発とこれを用いた悪性神経膠腫に対する治験実施の段階に至っている。中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は再発率の非常に高い難治性腫瘍であり、再発時に有効となる標準治療は未だ確立していない。細胞選択性のあるBNCTはこれらの例における治療でその利点が発揮され、“BNCTならば期待できる”疾患といえる。そこで本研究では中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)に対するBNCTの適応可能性につき中性子照射を含む基礎的研究を実施し、リンパ腫細胞および動物モデルに対するホウ素薬剤(BPA)を用いるBNCTの効果を検証する世界で初めての試みである。研究代表者はヒト由来のリンパ腫細胞を用いてヌードマウス脳腫瘍モデル、皮下腫瘍モデルを作成し、ホウ素薬剤(BPA)を投与し腫瘍細胞への良好なホウ素集積を確認した。また、腫瘍モデルを用いてbiodistributionの評価を行い最適な薬剤投与方法も検討している。さらにリンパ腫細胞を用いた薬剤・放射線感受性の検討や動物モデルを用い中性子照射実験を行い、BNCTに用いるパラメータを算出するとともに、PCNSL、特に再発例を対象とする全脳照射を視野に入れたBNCTの安全性・有用性を検討し、最適な治療プロトコールを立案する。また、PETを用いて、収集し線量分布の描画と至適治療計画まで行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのリンパ腫細胞を用いたパイロット研究で、in vitroにおいてRAJIリンパ腫細胞内への良好なホウ素集積を確認し、グリオーマ細胞と同等であることがわかっている。令和元年度には2種のヒト由来のリンパ腫細胞(RAJI、RL)を用いてマウス脳腫瘍モデル・皮下腫瘍モデルを作成しホウ素薬剤(BPA)を投与した。皮下腫瘍モデルにおいては腫瘍内ホウ素濃度はそれぞれRAJI 5.2±4.8, RL 10.3±5.4μg10B/gであり、正常組織(脳、血液、肺、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、筋肉)への異常集積は認めなかった。また脳腫瘍モデルにおいては腫瘍内ホウ素濃度はRAJI、RLそれぞれで22.92, 3.96μg10B/gであった。また、腫瘍/正常脳(T/N)比はRAJI=3.1, RL=2.5であった。これらの結果からは悪性リンパ腫動物モデルに対する全身合併症の軽減や、リンパ腫細胞への選択的ホウ素集積など悪性リンパ腫に対するBNCTの臨床応用に向け期待が持てる結果であった。 次年度は予定通り悪性リンパ腫動物モデルを用いた至適投与条件の検討とリンパ腫細胞を用いた薬剤・放射線感受性の検討および動物モデルを用いた中性子照射実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのリンパ腫細胞を用いた研究で、in vitro/ in vivoにおいてRAJI, RLリンパ腫細胞内への良好なホウ素集積を確認されている。動物モデルを用いたin vivo実験を追加し、至適投与条件の検討を行う。その後リンパ腫細胞に対する殺細胞効果を評価すべく、in vitro BNCT実験を予定しており、RAJIリンパ腫細胞にBPAを曝露した後に中性子照射を行いcolony forming assayを用いて照射線量と細胞生存率の関係性を導き、ホウ素化合物と腫瘍細胞に特徴的なパラメータであるCBE(Compound Biological Effectiveness、BNCTで用いられる生物学的効果指標)値を算出する。最終的には脳腫瘍モデルを用い中性子照射実験を行い、生存期間分析を用いて治療効果の検証を行う。また、リンパ腫に対するBPA-BNCTの生物学的効果を明らかにし、FBPA-PETの撮影および申請者所属施設でこれまでに治療してきたリンパ腫症例の検討を行いBNCTへの適用について、その有効性・安全性を評価し線量分布の描画と至適治療計画を行う予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)令和元年度予定予算の一部分は、リンパ腫細胞、脳腫瘍動物モデルを用いたin vitro / vivo中性子照射実験に使用予定であったが、原子炉使用制限や本年度の実験結果から脳腫瘍モデル数を増やし実験を行う計画とするため次年度使用額が生じている。
(使用計画)本年度に行った脳腫瘍モデルおよび正常マウス・ラットを用いた薬剤集積・分布実験を追加施行する必要があるためこれに使用予定としている。また令和元年度に予定していた研究計画の一部を令和2年度に遂行し、全体としてのわずかな計画の遅れを修正していく予定である。 次年度はKURへの申請も終えており、中性子照射実験ができる予定となっている。in vitro BNCT実験、脳腫瘍モデルを用いた中性子照射実験を行い、生存期間分析を用いて治療効果の検証を行う。
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Research Products
(3 results)