2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K24056
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
梶川 修平 岡山理科大学, 獣医学部, 助教 (60846848)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 破骨細胞 / Profilin1 / 皮質骨 / 分枝状アクチン線維 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨粗鬆症は高齢化と切り離せない要因による骨代謝バランスの崩壊を原因とし、超高齢社会である日本では約10人に1人が骨粗鬆症罹患者である。その治療に頻用されるビスホスホネート製剤は長期連用により主に皮質骨からなる大腿骨骨幹部に骨折が生じることが報告され、皮質骨の制御機構の解明が急務となっている。本研究では、破骨細胞特異的にアクチン重合制御因子Profilin1を欠損させた(Pfn1-cKO)マウスが、海綿骨での破骨細胞の増加、および、通常破骨細胞の分布が限られる皮質骨骨内膜側に全周性に破骨細胞が広く分布する表現型を示す、という我々の発見をもとに、Pfn1による破骨細胞の骨量制御メカニズムを明確にし、皮質骨量制御の可能性の検討と骨減少症の治療ターゲットの発見を最終的に目指すものである。 2019年度の研究では、Pfn1は破骨細胞の分子状アクチン線維形成を抑制することで、その遊走性を負に制御していることを明らかにし、Pfn1-cKOマウスでは破骨細胞が分枝状アクチンより構成される細胞構造を過剰に持つことで海綿骨における破骨細胞増加と皮質骨への破骨細胞異常分布を生じる可能性が推測された。そこで2020年度は下記の実験を行った。まず、野生型マウスに対して、分枝状アクチン線維形成阻害剤を低濃度で投与し、骨量増加が認められるかを検討したところ、大腿骨の海綿骨量に有意な増加が認められた。更に、卵巣摘出を行った骨粗鬆症モデルマウスに対して、同様に阻害剤投与を行ったところ、海綿骨量低下に対する顕著な改善が認められた。これらのことから、破骨細胞の分枝状アクチン線維形成が海綿骨量を制御している可能性が示唆された。一方、皮質骨量は阻害剤処理により増加傾向にあったものの有意な差は得られなかった。これは阻害剤の効果はあるものの、低濃度投与であったため効果が緩やかになったものと推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、Pfn1が破骨細胞の分子状アクチン線維形成を抑制し、それにより破骨細胞の皮質骨への異常な分布が抑えられている可能性を見出し、2020年度の日本骨代謝学会にて発表を行った。2020年度は分枝状アクチン線維形成阻害剤のマウスへの投与実験を行い、マウスの海綿骨量の有意な増加、および、皮質骨量の増加傾向、という結果が得られた。更に、卵巣摘出による骨粗鬆症モデルマウスへの阻害剤投与にでも同様の作用が認められ、骨量の低下が大きく抑制された。 しかしながら、以下の予期せぬ理由により、計画よりも進捗がやや遅れている。 (1)新型コロナウイルスの蔓延により、遠方の共同研究先で飼育しているマウスに対して現地に赴いて行わなければならない実験の実施が出来なくなった。 (2)新型コロナウイルスの蔓延により、使用予定だったいくつかの実験試薬の納品に極端に時間がかかり、その後の実験が全て遅延してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、まず皮質骨量に作用を及ぼしうる阻害剤の至適濃度を検討し、再度、前述の投与実験を行う。その後、組織学的解析を実施することで分枝状アクチン形成阻害によって破骨細胞分布の変化に関して検討する。更に、破骨細胞が皮質骨に異常分布する表現型を示すPfn1-cKOマウスに対し、分枝状アクチン形成阻害剤を処理し、破骨細胞異常分布とそれに伴う骨変形が抑制できるか検討する。また、破骨細胞の分枝状アクチン線維形成を誘導する因子を同定するため、野生型、Pfn1-cKO、卵巣摘出マウスの海綿骨や皮質骨を組織培養し、その培養上清中に含有される破骨細胞の分枝状アクチン線維形成を誘導する因子の探索を行う。
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Causes of Carryover |
予期せぬ新型コロナウイルスの蔓延および感染予防によって、実施予定だった実験に遅れが生じ、共同研究先での実験も出来ず、更には、共同研究先での会議、参加・発表予定であった国内・国際会議が全てリモート開催に変更されたため、次年度使用額が生じた。本年度は新型コロナウイルスの蔓延状況を十分に検討し、行うことが出来なかった共同研究先で飼育しているマウスを用いた実験や試薬調達に時間がかかり遅延している実験を実施する。
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