2021 Fiscal Year Research-status Report
癌進展に関わる乳癌患者腸内細菌叢と宿主微小環境構築の交互作用解明
Project/Area Number |
19K24057
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
和田 寛也 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 臨床教授 (70851509)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | メタゲノム解析 / 乳癌 / 腸内細菌叢 / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管免疫は腸内細菌叢と量的・質的にバランスを保っており、dysbiosisと呼ばれる腸内細菌叢の恒常性の変容は、炎症性腸疾患などの消化管疾患のみならず、 消化管外が標的となる関節リウマチや多発性硬化症などの全身性自己免疫疾患の発症に影響を及ぼすと考えられている。更に、近年、メタゲノム解析が可能となり、健常人由来の糞便のマイクロバイオームプロフィールや、疾患発症・進展並びにそれに関する宿主の免疫環境との関連性が徐々に明らかになっている。現在の所、腸内細菌叢が実際の癌患者、特に乳癌などの非消化器癌の発癌・進展、腫瘍内微小環境並びに宿主の癌免疫応答へ及ぼす影響はほとんど明らかとなっていない。本研究では、健常人との比較によって、乳癌患者特徴的な腸内細菌叢のプロフィールを同定し、それらの菌群の乳癌進展に及ぼす影響を検討する。また、 TCGAデーターベースをリファレンスとして利用し、Nanostring技術によって同定された免疫サブタイプ(腫瘍内微小環境)と同定された腸内細菌叢との関連性を解析し、腫瘍免疫療法の奏効性に強く関わる免疫関連サブタイプ(腫瘍内微小環境)並びに乳癌患者の宿主免疫環境に与える影響を明らかにし、その分子機序を標的とする革新的がん治療薬開発の契機を得る。現在、当該施設のMiSeqシステムを用いた複数サンプル解析用のIndexが付与されたライブラリーの作製し、細菌叢解析を施行している。糞便より、いくつかのキットを使用し、ボルテックス時間等の抽出条件を変えて、DNAを抽出した。DNAの収量と品質に基づき抽出条件を決定した。 Preliminaryの実験により、16S rRNA領域をPCRによって増幅し、得られたサンプルを利用し、シーケンスを施行した。 現在、追加症例のリクルート中で、研究協力施設の症例も解析する予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由 16S Metagenomic Sequencing Library作製は、糞便よりDNAを抽出し、16S V3-V4領域(本研究)に対し、特異的プライマーを用いたPCRで増幅後、最大12 x 8 = 96サンプルの検体にインデックスアダプターを付加し、シーケンスライブラリーを作製、同時にMiSeqシステムでシーケンス配列を読み取り解析する。1ランのシーケンス時には、解析する多検体を入手しておく必要がある。現在、被験者のリクルートを推進しているが、コロナ感染症拡大が続いたため、福岡歯科大学の症例数の不足のため、研究の進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後以下の研究を施行する。A.健常人及び乳癌患者の糞便のメタゲノム解析:健常人及び乳癌患者の糞便を採取し、次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析を施行し、乳癌患者に特徴的 に見られる細菌群を同定する。B.乳癌のサブタイプ解析と臨床病理学的事項の腸内細菌叢の関連性の検討:乳癌のサブタイプ、臨床病期や組織型、リンパ節転移、vなどの臨床病理学的事項とAの細菌群との相関を検討する。C.末梢血単核球及び腫瘍内炎症細胞のサブタイプ解析と腸内細菌叢の関連性の検討:健常人及び乳癌患者より末梢血単核球あるいは腫瘍内浸潤炎症細胞を分離し、抑制性T細胞及び骨髄由来抑制性細胞、Th1、Th17細胞などを解析し、Aで同定された細菌群との相関を検討する。D.乳癌組織の免疫微小環境のサブタイプ化と腸内細菌叢の関連性の検討:TCGAで公開されている大規模乳癌遺伝子情報と免疫関連サブタイプの遺伝子プロファイル及びホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織からのような断片化したmRNAを使用しても信頼性のあるmRNA解析を可能にするNanostring技術を利用することによって、小規模サンプルでも的確で信頼性のある免疫関連の微小環境のサブタイプ化を行う。このサブタイプとAで同定された細菌群との相関を検討する。
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Causes of Carryover |
16S Metagenomic Sequencingは、最大96サンプルを同時にシーケンスすることでコストを下げることができる。コロナ禍で症例のリクルートが遅延しているため、次年度では申請書等に記載した関連病院からの症例のリクルートも行う予定とし、症例の確保に努める。現在、各施設の関連科には、既に承諾を得ている。従って、追加症例のDNA抽出用の消耗品及び抽出したDNAのQuality checkにかかる費用及び今後購入されるシーケンス試薬にかかる費用を次年度使用に繰り越す必要が生じた。今後、症例のリクルートを促進し、効率の良い16S Metagenomic Sequencingを施行し、前述の研究計画を速やかに遂行する。
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