2023 Fiscal Year Annual Research Report
癌進展に関わる乳癌患者腸内細菌叢と宿主微小環境構築の交互作用解明
Project/Area Number |
19K24057
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
和田 寛也 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 臨床教授 (70851509)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | メタゲノム解析 / 乳癌 / 腸内細菌 / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管免疫は腸内細菌叢と量的・質的にバランスを保っており、dysbiosisと呼ばれる腸内細菌叢の恒常性の変容は、炎症性腸疾患などの消化管疾患のみならず、消化管外が標的となる関節リウマチや多発性硬化症などの全身性自己免疫疾患の発症に影響を及ぼすと考えられている。近年、メタゲノム解析が可能となり、健常人由来の糞便のマイクロバイオームプロフィールや、疾患発症・進展との関連性が徐々に明らかになっている。腸内細菌叢に直接暴露される大腸癌における腸内細菌の特徴が徐々に明らかにされる一方、特に乳癌などの非消化器癌の発癌・進展へ及ぼす影響については十分に明らかとなっていない。本研究では、TCGAやBICデーターベース等をリファレンスとして利用し、乳癌組織内の細菌叢と乳癌患者特徴的な腸内細菌叢のプロフィールを同定し、それらの菌群の乳癌発症との相関を検討した。乳癌患者において、健常コントロールと比較し、有意なalpha多様性は認められなかったものの、beta多様性については癌患者において低い傾向を認めた。腸内細菌叢では門レベルでFirmicutesが、属レベルでLactobacillusの低下を認めた。病期などの臨床病理学的所見との相関については有意な所見が得られなかった。腫瘍内細菌叢は非腫瘍性コントロールと比較し、門レベルでFirmicutes, Fusobacteria, Bacteroidetesが、綱レベルで、FusobacteriiaやBacteroidiaが上昇していた。これらの所見は、これまでの報告と矛盾しない所見であり、p_Firmicutes/c_Clostridia、p_Fusobacteria/c_Fusobacterialis/o_Fusobacterialesやp_Bacteoidetes/c_Bacteroidetes等が発癌・進展へ寄与している可能性が考えられる。これらの腸内細菌叢が免疫チェックポイント阻害剤の効果に関わる免疫系への影響のメカニズム解明の検討が期待される。
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