2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K24070
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井階 一樹 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (00849432)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 唾液腺 / 再生 / 転写因子p63 / 導管結紮 / 放射線照射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は唾液腺再生における転写因子p63の発現を解析し、再生医療へ応用することを目的とした。まず[step 1]として損傷唾液腺の再生過程におけるp63の発現を確認した。実験には8週齢のICR雌マウスを用い、右側耳下腺を対象とした。耳下腺の損傷方法として、排泄主導管を結紮・開放することによる導管結紮と、耳下腺領域の放射線照射を用いた。 導管結紮は7日後に開放し、結紮1,3日後、開放0,7,14日後の耳下腺におけるp63の発現を免疫組織染色にて解析した。結紮1日後ではp63陽性細胞数に変化は見られなかったが、結紮3日後は増加し、組織の損傷が最大である結紮7日後(開放0日後)には最も増加していた。結紮開放後は組織の回復に伴ってp63陽性細胞数が徐々に減少し、開放14日後では正常唾液腺と同程度であった。開放0日後におけるp63のアイソフォームをqPCRで解析したところ、ΔNp63の発現が増加し、TAp63は減少していた。唾液腺の幹細胞マーカーであるKeratin5の発現を免疫組織染色にて確認したところ、開放0日後において最も増加しており、ほぼ全てのp63陽性細胞と共発現していた。また、筋上皮細胞のマーカーであるαSMAの発現を確認したところ、p63/Keratin5両陽性の細胞と多くが共発現していた。 放射線照射は9Gyを耳下腺領域のみに照射し、照射1,3,7,14,28日後の耳下腺におけるp63の発現を導管結紮と同様に解析した。照射1,3日後ではp63陽性細胞数に変化は見られなかったが、組織の損傷が最大である照射7日後に最も増加した。その後は組織の回復傾向に従い減少した。照射7日後にはΔNp63が増加し、TAp63に変化は見られなかった。また、Keratin5はほぼ全てのp63陽性細胞と共発現し、αSMAの多くがp63/Keratin5両陽性の細胞と共発現していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
[step 1]の研究計画は完遂しており、続いて[step 2]のp63陽性細胞の追跡実験を年度末から予定していた。しかし、新型コロナウイルスの影響により勤務体系・物資調達に支障が生じており、予定通りの研究が遂行できない状況となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
[step 2]の研究計画は新型コロナウイルスの影響により見通しが立たないため、先に[step 3]である増殖因子によるp63の発現活性と制御機構の解析を行う。唾液腺の主な増殖因子であるEGF,FGF7,FGF10を用い、ΔNp63の発現活性と調節に関与するシグナルを検討する。その後、[step 4]の実験として[step 3]で検討した増殖因子を不可逆的に損傷させた唾液腺に投与し、唾液腺の再生が誘導されるか検証する。
|
Causes of Carryover |
研究計画の遂行予定順序の変更による購入物質の変更、消耗品の節約による購入頻度の減少、新型コロナウイルスによる年度末学会の中止等により当該年度の実施出額が減少し、次年度使用額が生じた。 翌年度は残りの研究計画を遂行するための実費として主に使用する予定である。次年度使用額は[step 4]で購入予定の増殖因子の購入量増加のために使用することを想定している。
|