2020 Fiscal Year Annual Research Report
シクロホスファミド投与により臼歯や頭蓋骨縫合部の形成異常に至るメカニズムの解明
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19K24091
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中津川 昂平 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (40848248)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | シクロホスファミド / 小児がん治療 / 化学療法 / 放射線治療 / 先天欠如歯 |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究の結果より、生後1-10日のマウスに代表的な抗がん剤であるシクロホスファミド(CPA)を投与すると、歯の形成段階に応じて第三臼歯(M3)の欠如、矮小化、萌出遅延といった歯の形成異常が生じることを示した。過去の研究結果では、様々なシグナル伝達経路が歯の形成に関与していることが報告されており、本研究では歯胚形成に重要な役割を担うWntシグナルに着目した。WntシグナルをGFPで可視化するマウス(R26-WntVisマウス)を用い、CPAを投与することで、歯の発生過程への影響の探索を行った。①正常な臼歯発生におけるWntシグナルの発現分布の解明、②CPA投与が及ぼす臼歯歯胚におけるWntシグナルへの影響の解明を行うことを研究目標とした。 ①胎生14日から生後8日のR26-WntVisマウスの臼歯を観察したところ、歯の形成段階によってGFPの局在が異なっていた。歯の形成段階の進行に伴って、一次エナメル結節、二次エナメル結節、咬頭周囲のエナメル芽細胞や象牙芽細胞、サービカルループの象牙芽細胞と順にGFPの局在が変化していくことがわかった。この結果はWntシグナルが歯の形成段階によって様々な部位で重要な役割を担っていることが示唆された。 ②これまでの研究結果より生後4日のマウスにCPAを投与すると帽状期であるM3が消失することが示されている。今回生後4日のR26-WntVisマウスにCPAを投与し、投与1,2日後においてM3の組織切片のTUNEL染色を行った。実験群のM3では、TUNEL染色陽性細胞は増加して歯胚は縮小し、アポトーシスの増加によってM3の欠如が生じていると考えられた。実験群では、GFPが発現している細胞周囲にTUNEL染色陽性細胞が増加していた。これらの結果から、CPA投与直後にはWntシグナル周囲の細胞特異的にアポトーシスが生じることが示唆された。
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