2020 Fiscal Year Annual Research Report
病的活性化破骨細胞に発現する膜表面分子を標的とした病的骨破壊特異的制御法の開発
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19K24098
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久本 由香里 九州大学, 歯学研究院, 助教 (40729026)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 破骨細胞 / 骨吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでに、IL-1β存在下で形成された破骨細胞の骨吸収能が著明に亢進することを報告している。前年度は、マウス骨髄由来培養破骨細胞を用いて、IL-1β刺激により発現が誘導される遺伝子をマイクロアレイにより探索した結果、候補としてTransferrin receptor 1 (TfR1)が示された。そこで本年度はこのTfR1に注目して破骨細胞におけるその機能と分子メカニズムの解析を行った。 マウス骨髄細胞にRANKLと同時にIL-1βを曝露した結果、成熟破骨細胞においてTfR1のmRNAおよびタンパク質発現がIL-1β曝露により有意に上昇することを確認した。TfR1を介してトランスフェリンに結合した鉄が細胞内に取り込まれることから、IL-1β刺激が細胞内の鉄流入に与える影響を蛍光試薬を用いて検討した。その結果、RANKL刺激により細胞内の鉄は著しく増加するが、IL-1β存在下ではさらに亢進することが明らかとなった。また、細胞内鉄の増加によりミトコンドリアの生合成が活性化し、破骨細胞への分化や骨吸収能を亢進することが報告されている。このミトコンドリアの活性化に関与するPGC-1βの発現およびCREBのリン酸化を解析した結果、IL-1βによる影響は認められなかった。さらに、骨吸収に重要な酵素であるカテプシンKおよびプロトンポンプであるATP6v0d2、TfR1の発現を制御することが知られているIron regulatory protein 1(IRP1)およびIRP2の発現にも変化はなかった。 以上の結果から、IL-1β存在下で形成された破骨細胞はTfR1の発現が上昇し、細胞内への鉄取り込みが増加することで骨吸収能が亢進する可能性が考えられるが、TfR1の発現制御や骨吸収能亢進のメカニズムは既知の経路ではなく新しい別の経路を介している可能性が示唆される。
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