2021 Fiscal Year Research-status Report
義歯安定剤に含有されるアルコールが酒気帯び運転違反の判定に及ぼす影響
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19K24099
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岡崎 ひとみ 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (90846156)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 義歯安定剤 / エタノール溶出量 / ガスクロマトグラフ / 酒気帯び運転 / 呼気アルコール濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、アルコールを摂取していないにもかかわらず義歯安定剤が原因で酒気帯び運転の基準値を上回る呼気アルコール濃度が検出され、誤って逮捕されるケースが社会問題となっている。しかし義歯安定剤が呼気アルコール濃度に及ぼす影響については明らかになっていない。本研究では、義歯安定剤の使用量、使用時間、およびエタノール含有量と呼気アルコール濃度との関連性を解明することを目的とする。 昨年度までにガスクロマトグラフ質量分析計による市販義歯安定剤のエタノール溶出量測定は終了している。結果は、タフグリップが他と比較して有意に大きい溶出量を示した。新ライオデントとクッションコレクト間には有意差を認めなかった。また、ホームリライナーからのエタノールの溶出は、浸漬開始から30分までの早期に多く生じることが示唆された。 呼気中のアルコール濃度の測定は、アルコール検知器を用いた。常温重合レジンを用いて作製した口蓋床に、メーカー推奨1回量のホームリライナーを塗布したものを被験者に装着してもらい、装着直後から60分経過まで5分毎に測定した。測定により時間ごとの呼気1L中のアルコール濃度を算出した。呼気中のアルコール濃度の測定については、エタノール溶出量が大きかったタフグリップのみ行った。多くの被検者が装着5分後に0.15mg/Lを大きく超える最大値を示し、その後時間経過により濃度は低下するが、60分後においても0.05~0.1mg/Lの値が検出された。しかし、新型コロナウイルス流行の影響により目標の被験者数には達していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ガスクロマトグラフ質量分析計を用いた市販義歯安定剤のエタノール溶出量は既に測定終了している。現在はガスクロマトグラフで最もエタノール溶出量が大きかった市販製品を用い、口蓋床とアルコール検知器を使用した呼気中アルコール濃度の測定を行っている。新型コロナウイルス流行の影響により未だ予定人数には達しておらず、やや進歩は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
アルコール検知器を使用した呼気中アルコール濃度の測定を予定人数に達するまで行う。その後エタノール含有量を変化させた試作義歯安定剤を作製し、市販義歯安定剤と同様にエタノール溶出量測定および呼気中アルコール濃度測定を行う。最終的に、安全な義歯安定剤の使用方法の確立と本剤の使用量、使用時間、およびエタノール含有量と呼気アルコール濃度との関連性を解明する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行により被検者の人数を増やすことができなかった。また学会が軒並み中止やWeb開催となり、旅費を計上する機会がなかった。 次年度は呼気アルコール濃度の測定を行うが、被検者の人数を当初より増加させる予定である。さらに研究の進捗次第では、義歯安定剤以外のアルコールを含有する歯科材料で同様の実験を行う計画とする。
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