2019 Fiscal Year Research-status Report
末梢血単球を標的としたゾレドロン酸の新規骨吸収抑制メカニズムの解明
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19K24103
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
頌彦 玲子 (瀧本) 昭和大学, 歯学部, 助教 (00848898)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ビスホスフォネート / 破骨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゾレドロン酸などの窒素含有ビスホスホネート製剤は、骨吸収抑制剤として多用される一方、歯科領域では顎骨壊死の原因になることが問題となっている。ゾレドロン酸が成熟破骨細胞の機能を阻害しアポトーシスを誘導することが、ゾレドロン酸の骨吸収抑制の作用機序として知られている。しかし、破骨細胞分化に対するゾレドロン酸の効果は明らかにされていない。我々は、ゾレドロン酸が末梢血単球の破骨細胞への分化を抑制する可能性があるのではないかと考えた。ヒト末梢血から単核球を分画し、さらにCD14陽性単球を単離した。ゾレドロン酸は、ヒト単核球とそこから単離したCD14陽性細胞を膜を隔てて共存培養し、ゾレドロン酸を添加したところ、破骨細胞分化抑制性の転写因子IRF8の発現が上昇することが分かった。そこで、どう共存培養系に破骨細胞分化誘導因子であるRANKLを添加したところ、CD14陽性細胞は酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ陽性の多核細胞、すなわち破骨細胞に分化したが、ゾレドロン酸は濃度依存的に破骨細胞分化を抑制した。一方、CD14陽性細胞の単独培養系では、ゾレドロン酸による破骨細胞分化抑制作用は認められなかった。一般に、ゾレドロン酸の末梢血単核細胞への作用には、γδT細胞の活性化が関与すると言われている。そこで、CD14陽性細胞と共存培養するヒト末梢血単核球からγδT細胞を除去したところ、ゾレドロン酸によるCD14陽性細胞の破骨細胞分化抑制は減弱した。このことから、ゾレドロン酸は、末梢血単核球のγδT細胞を含む何らかの細胞から分泌される液性因子を介してCD14陽性細胞の破骨細胞分化を抑制すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゾレドロン酸は、成熟破骨細胞の機能を阻害し、アポトーシスを誘導することはよく知られているが、本研究で、ゾレドロン酸が破骨細胞分化を抑制するという、新しい作用機序が存在することを発見した。さらに、末梢血に含まれる単球以外の何らかの細胞がゾレドロン酸による単球の破骨細胞分化抑制に関与すること見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
破骨細胞分化抑制性の転写因子IRF8のCD14陽性単球における発現抑制がゾレドロン酸によるCD14陽性単球の破骨細胞分化に与える影響を検討する。さらに、IRF8の発現促進と破骨細胞分化抑制に関わる細胞および液性因子が何であるかを解析する。また、液性因子の候補として、破骨細胞分化抑制性のサイトカインが考えられるので、ゾレドロン酸処理により末梢血単核球で産生が亢進するサイトカインを明らかにする。
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Causes of Carryover |
ヒト末梢血を採取し行う炎症性サイトカイン産生の測定実験が予定より遅れた。そのため、使用する予定だったヒト単核球の分画、CD14陽性細胞の単離を含め、細胞分画に必要な消耗品、試薬類を購入するための費用を使用しなかった。残された実験を行うため、次年度、上記の費用を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)