2020 Fiscal Year Research-status Report
Development and clinical application of short SiC fiber reinforced composite resin for dental CAD/CAM which can be used for long span bridges.
Project/Area Number |
19K24114
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高 昇将 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (00846082)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 繊維強化型レジン / SiC繊維 / 短繊維 / 欠損補綴 / CAD/CAM |
Outline of Annual Research Achievements |
炭化ケイ素(SiC)繊維強化型レジンの歯科臨床応用にあたり、SiC繊維強化型レジンの機械的強さを確保するため、SiC繊維のシランカップリング処理が必要であることを先行研究にて報告した。しかし、先行研究で使用していた試作シランカップリング処理剤による処理方法では時間がかかりすぎるため、短時間で処理が可能な市販シランカップリング処理剤による処理の効果について検討した。歯科臨床で用いられている市販シランカップリング処理剤を4種類用意し、これらを用いてSiC繊維を処理し、繊維強化型レジンを試作して3点曲げ試験に供した。試験片条件および3点曲げ試験の条件はISO4049:2009に準拠した。また、3点曲げ試験後の試験片の破断面の二次電子像を撮影し、SiC繊維に付着したベースレジンの状態を観察した。得られた試験結果と、以前実施した試作シランカップリング処理剤を用いた試験片の試験結果を比較した結果、機械的強さに有意差は認められなかった。このことから市販シランカップリング処理剤の有効性が示唆された。 また、昨年度、繊維長1mmおよび3mmのSiC短繊維を用いた繊維強化型レジンを試作し、それらの曲げ強さを測定、比較し、3mmの方が優れた補強効果を示すことを報告した。その際、試験片サイズを考慮すると繊維長2mmの場合の比較検討も追加したほうが良い旨指摘があったため、繊維長2mmのSiC繊維を含む繊維強化型レジンを試作し、1mmおよび3mmのそれらと機械的強度を比較した。その結果、2mmのSiC繊維を含む繊維強化型レジンは1mmのSiC繊維を含むそれより有意に高い機械的強さを示し、3mmのSiC繊維を含むそれのとの間には有意差は認められなかった。繊維長が長くなると力学的異方性が生じやすくなるため、力学的等方性を確保する観点から繊維長は2mmが適切であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、適切な繊維長および繊維含有量について検討を行ったが、昨年度中に研究成果を報告する機会を逃してしまったため、今年度当該内容を学会にて報告した。そこで受けた指摘を元に繊維長について検討し直す必要があったため、繊維長2mmのSiC繊維を含む試験片を製作し、追加実験を行った。この結果を元に、SiC短繊維強化型レジンの適切な繊維長について再検討したため、実験全体がやや遅れている。 また、試作したSiC繊維強化型レジンの長期耐久性を評価するためサーマルサイクル試験による加速劣化試験を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染症の流行のため機器を借用する予定の東京医科歯科大学を訪問することができず、加速劣化試験が行えていない。新型コロナウイルス感染症の感染対策の徹底およびワクチン接種が始まっていることもあり、次年度内には東京医科歯科大学にて加速劣化試験を実施できる見通しである。感染拡大が収まらず、東京医科歯科大学にて機器の借用ができない場合の対応策についても検討済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
試作したSiC繊維強化型レジンの長期耐久性を評価するため、サーマルサイクル試験を実施する。実施については、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まっていることを鑑み、当初の予定通り東京医科歯科大学を訪問することができるようであれば、本学で製作した試験片を持参し、サーマルサイクル試験機を借用して実施する予定である。訪問できない場合は、本学にて作製した試験片を郵送し、それを用いてサーマルサイクル試験を実施するよう依頼する。 サーマルサイクル試験に供する試験片形状は、ISO4049:2009に準拠し、試験片数は8とする。試験片に用いるSiC繊維強化型レジンは、繊維長2.0mmのSiC繊維を6.12wt%含有するものを供する。サーマルサイクル試験では、5℃および60℃の蒸留水に試験片を1分間ずつ交互に浸漬することを1回とカウントし、1000、5000、10000回繰り返す。次に、浸漬前の試験片をコントロールとし、それぞれの回数浸漬した試験片をISO4049:2009に準拠した曲げ試験に供し、曲げ強さおよび弾性係数を測定する。回数によるそれぞれの値の変化について検討し、長期耐久性を評価する。 また、前述の両案とも難しい場合は、代替としてソックスレー抽出器を使用した加速劣化試験を実施する。試験片条件は前述のサーマルサイクル試験と同様である。試験条件は、沸騰水中に0日間浸漬するものをコントロールとし、1日、7日、28日間浸漬した試験片をそれぞれISO4049:2009に準拠した曲げ試験に供する。得られた結果から、曲げ強さの変化について検討し、長期耐久性を評価する。 長期耐久性について評価した後、試作SiC短繊維強化型レジンを用いて実際の補綴物の形態を模した試験片を製作し曲げ試験に供する。これを元に、市販材料を用いて製作した試験片と機械的強さを比較し、臨床応用に耐えうるか検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行により、参加予定であった学会が誌上開催もしくは中止となっているため、旅費として使用予定だった金額が未使用となっている。 また、本年度中に論文投稿を予定していたが、実験の遅れに伴い論文投稿に関する費用をまだ使用していないため、その分も残余となっている。 次年度内に論文投稿を予定しているため、残余となっている金額については英文校正費・論文投稿費として使用予定である。また、加速劣化試験を行うに当たり、試験片を郵送する場合は試験片の送料が、ソックスレー抽出器を用いて行う場合は実験器具(ソックスレー抽出器、スタンド、クランプ、マントルヒーター、温度調節器等)を追加で購入する必要があるため、それらの購入に残余金額を使用する予定である。 さらに、長期耐久性を評価した後、臨床応用のために実際の歯の形態を模した試験片を製作し、その曲げ強さについて評価する予定である。この試験片を製作するため金型と、曲げ試験を行う際に用いるジグを製作依頼する予定であるため、この費用も残余金額から拠出予定である。
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