2019 Fiscal Year Research-status Report
BDNFによるセメント芽細胞分化誘導を基軸としたセメント質再生の基礎研究
Project/Area Number |
19K24120
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐々木 慎也 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (60848000)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 歯周組織再生 / ex vivo / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、歯周病により歯周組織が大きく欠損し、従来では抜歯となるような歯を保存すべく、生体外でセメント質様の硬組織を構築することを目的としている。具体的な方法としては、ヒトの歯の象牙質表面にヒト間葉系幹細胞を生着させ、歯周組織再生促進効果が明らかとなっているBDNFを作用させることで、象牙質表面にセメント質様硬組織を形成させるというものである。 初年度の実験では、ヒトの象牙質片上に間葉系幹細胞を培養するシステムを構築することを目的とした。抜去歯牙から切り出した象牙質片と購入したヒト間葉系幹細胞を使用し、4週間培養した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で象牙質表面を観察した。また培地中のDNA量を経日的に測定することで、細胞増殖の状況を観察した。SEMでの観察により、培養2週間で象牙質表面に細胞が接着している像が確認された。培養4週間では、接着している細胞の厚みが増していることが確認でき、細胞数の劇的な増加が示唆された。DNA量の計測でも、検出されるDNA量が増加していることが確認され、培地中の間葉系幹細胞が適切に増殖できることが示唆された。 以上の実験により、象牙質片上に間葉系幹細胞を培養することが可能であることが分かった。今後は、このシステムで培養した間葉系幹細胞をBDNFで刺激することで、セメント芽細胞様の細胞に分化させ、セメント質形成能が高まるかどうかを確認する。さらに、Ⅰ型コラーゲンを足場にし、象牙質片/間葉系幹細胞複合体の三次元培養を行い、その有用性を確認する計画としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載した実験計画概要の3項目のうち、1項目を終了した。2019年度の計画としては、BDNFを用いて間葉系幹細胞をセメント芽細胞様細胞へ分化させる実験も行う予定であったが、この内容は2020年度の実験計画に組み込むこととなった。以上のことから、おおむね当初の計画通りに進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、確立した培養系で培養した細胞をBDNFで刺激することで、セメント芽細胞へと分化させることを目標とする。また、象牙質片自体が細胞の分化に影響している可能性も考慮し、コントロールとしてPMMA上に細胞を培養したものとの比較も追加で行うこととしている。さらに、Ⅰ型コラーゲンを用いた三次元培養の培養システムを構築し、細胞分化や硬組織形成に与える影響について解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画した内容のうち、一部分を次年度に持ち越すこととなった。そのため、その実験で用いる予定であった抗体やELISAキットなどの試薬にかかる費用の分、次年度使用額として計上されている。予定している実験計画はおおむね順調に進捗しており、当初申請した使用計画に従って使用していく予定である。
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