2020 Fiscal Year Annual Research Report
平常時の地域保健対策が有する災害時の健康増悪抑制効果の検証
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19K24189
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Research Institution | Hyogo Earthquake Memorial 21st Century Research Institute |
Principal Investigator |
山村 奈津子 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, 研究戦略センター, 主任研究員 (70846518)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 豪雨災害 / 健康危機管理 / 地域保健対策 / 生態学的研究 / 要介護認定率 / 標準化死亡比 / 市町村国民健康保険医療費 |
Outline of Annual Research Achievements |
災害時の健康被害予防に寄与する平常時の自治体の保健対策について示唆を得るため、平成30年7月豪雨災害の被災市町村を対象として、災害に伴う健康指標(標準化死亡比、被保検者1人あたりの市町村国民健康保険医療費、要介護認定率)の変化と災害前の保健対策の実施状況や被災状況等との関連を解析した。 まず、平常時の保健対策の実施状況に基づいて被災市町村をグループ化し、グループごとに災害後に生じた健康指標の有意な変化や変化の程度を推定した。その結果、「特定健診・保健指導の高実施率郡」では、災害後に有意な変化が生じた健康指標が少なく、変化の程度も相対的に小さい傾向が認められた。また、3つの健康指標のうち、要介護認定率については全ての市町村グループで災害後の有意な変化を認めたことから、災害による高齢者の健康状態の変化を鋭敏に反映する指標の1つである可能性が示唆された。 次に、指標を要介護認定率に絞り、災害後の変化と関連要因についてさらなる解析を行った。その結果、軽度(要支援1・2)要介護認定率は、中度(要介護1~3)及び重度(要介護4・5)要介護認定率に比べて災害後の変化が大きい傾向を認め、自立度が比較的高い軽度要介護高齢者において、災害後に介護保険サービスの需要が高まる可能性が示唆された。他方、被災状況や地域特性、保健事業と要介護認定率の変化との間に明示的な関連は認められず、本研究では測定していない他の要因が要介護認定率の変化に影響している可能性も示唆された。 本研究結果の一部は、2020年10月に開催された第79回日本公衆衛生学会総会で発表(P-13-4-2:平成30年7月豪雨災害の被災市町村における要介護認定率の変化に関する検討)し、また現在論文化を進めている。 本研究を通して、災害による健康状態の変化を観察・評価する指標や健康被害の軽減に寄与する要因について今後の保健対策に資する一知見を得た。
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Research Products
(1 results)