2019 Fiscal Year Research-status Report
Epidemiological study for seasonality change of respiratory syncytial virus epidemics: risk factor analysis and mathematical modeling
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19K24219
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
三山 豪士 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 公衆衛生部, 研究員 (30846241)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | RSウイルス感染症 / 季節性変動 / 降水量 / 海外渡航者数 / 感染症疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本におけるRSウイルス(RSV)感染症は、秋・冬の流行が一般的であったが、近年は夏に流行が認められている。本感染症の予防には、流行時期の把握は重要となる。本研究では、流行時期の変動が統計学的に有意かを検証した。また、RSV感染症発生数(発生数)の要因を探索するため、これまで関連が示唆されている気候(降水量・相対湿度)とRSV発生数との関係について解析した。さらに、海外から日本への渡航者数(渡航者数)は2012ー2019年に急増しており、海外からのRSV侵入も危惧されることから、渡航者数とRSV発生数との関係についても解析した。 流行時期変動の解析には2012ー2019年のRSV感染症発生数を用いて、各年の流行時期は年により異なるか、また2012ー2015年シーズンと2016ー2019年シーズン間で流行時期が異なるかを検証した。降水量・相対湿度の解析には大阪のデータを用い、渡航者数の解析には日本全体のデータを用いた。 2012ー2015年シーズンは、それぞれ37ー51、38ー52、44ー52、41ー翌年1週にRSV感染症の集積が認められ、2016ー2019年シーズンは、それぞれ36ー49、31ー43、31ー41、31ー42週に集積が認められた。集積時期は年により異なり(p<0.001)、2016-2019年シーズンは2012-2015年シーズンより早い時期に集積が認められた(p<0.001)。降水量とRSV発生数には負の相関(対数化係数:-0.13、95%信頼区間:-0.19ー-0.06)が認められ、渡航者数とRSV発生数には正の相関(0.27、0.09ー0.45)が認められた。相対湿度とRSV発生数には有意な関係は認められなかった。 日本のRSV感染症流行時期は2016年以降、秋・冬から夏へと変動していること、また降水量および海外渡航者数とRSV発生数の関連が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の実施計画は、①流行期に影響する可能性のある因子とRSV感染症発生動向を時系列及び空間的に記述し、時系列解析を用いて発生動向に関連する因子を探索すること、②RSV感染症流行を予測する数理モデルの作成と検証すること、また、③既存のRSV感染症発生データから、RSV感染症の流行動態の把握に重要となる基本再生産数の推定、及び流行期の変動が再生産数へ及ぼす影響を分析することである。現時点で計画①の解析を終えている。本年度に解析①の学会発表及び報告書作成完了を予定していたが、作成に計画以上の時間を費やし、翌年度へ計画を持ち越した。また、この遅れから解析結果の学会発表ができなかった。本年度は、解析①の学会発表及び報告書作成と計画②、③の解析・報告書作成を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実施した研究の報告書作成、及び、RSV感染症流行を予測する数理モデルの作成と検証すること(本研究の実施計画②)、既存のRSV感染症発生データから、RSV感染症の流行動態の把握に重要となる基本再生産数の推定、及び流行期の変動が再生産数へ及ぼす影響を分析すること(実施計画③)、を実施する。実施にあたり、RSV感染症の数理モデルの情報を文献等により検索し、数理モデルの基本骨格を作成する。さらにこれまでの研究で明らかにされた気候と海外から日本への渡航者数の因子をモデルに組み込む。 新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年の海外渡航者数の減少が想定され、2020年シーズンのRSV感染症発生に影響する可能性が考えらえれるため、発生動向を注視し、必要があればその影響を評価する。ただし、新型コロナウイルス感染症によってもたらされた新たな生活様式の影響等で感染症発生動向の変化が指摘されているため注意を要す。
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Causes of Carryover |
本年度予定していた研究解析結果の取りまとめの遅れから、計画していた国際学会発表の参加を中止した。また、新型コロナウイルス感染症の影響による国内学会の延期に伴い、旅費の支出が減少した。以上の理由より次年度使用額が生じた。翌年度に、解析結果の学会発表と、延期された学会への参加を追加計画する。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響により、学会等のイベント開催がWeb開催・誌上開催等へ変更されていることから、旅費の支出額が減少する可能性があり、計画変更等、柔軟に対応する必要がある。
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