2020 Fiscal Year Research-status Report
Epidemiological study for seasonality change of respiratory syncytial virus epidemics: risk factor analysis and mathematical modeling
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19K24219
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
三山 豪士 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 公衆衛生部, 研究員 (30846241)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 新型コロナウイルス感染症 / 流行予測 / 実効再生産数 / 感染症疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、RSウイルス感染症の流行を予測する数理モデルを作成すること、また、モデルの予測精度を検証することを目的の一つとしている。当該年度において、社会的に重要な課題である新型コロナウイルス感染症が流行したこと、また、新型コロナウイルス感染症対策等の影響により大阪府においてRSウイルス感染症が流行しなかったことから、新型コロナウイルス感染症を対象として流行予測の数理モデルを作成し、予測精度を検証した。また、大阪府における新型コロナウイルス感染症の実効再生産数を既存の方法(Coriら2013)を用いて推定し、介入効果と実効再生産数の関係を定性的に評価した。 流行予測研究:中華人民共和国における新型コロナウイルス感染症の報告数を用いて現象的モデル(RichardsモデルとSusceptible-Infected-Recovered (SIR)近似解モデル)及び都市封鎖の効果を考慮した機構的モデル(指数関数モデルとSIRモデル)を作成し、各モデルの予測精度を比較した。機構的モデルは介入の効果等を組み込むことができ、現象的モデルは流行の仕組みを考慮できないモデルである。予測精度の指標として予測値と観測値の誤差を示す二乗平均平方根誤差(RMSE)を用いた。本研究では、都市封鎖の効果のみを考慮した単純な機構的モデルであったが、現象的モデルに比べ予測精度が高い傾向にあった。機構的モデルは発生動向の仕組みを理解するのに有効であり、かつ高い予測精度を持つことが示された。 実効再生産数推定:大阪府の公表する届出日別・発症日別の新規報告者数を用いて、それぞれの実効再生産数を推定した。実効再生産数が1を超えると報告者数は増加し、1を下回ると減少した。感染症対策等の介入実施後に実効再生産数の減少が認められた。特に緊急事態宣言直後は実効再生産数が1を大きく下回り、対策の有効性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題は、RSウイルス感染症の流行を予測する数理モデルを作成することを目的の一つとしている。当該年度において、学術的、社会的に喫緊の課題である新型コロナウイルス感染症が流行したこと、また、新型コロナウイルス感染症対策等の影響により大阪府においてRSウイルス感染症が流行しなかったことから、新型コロナウイルス感染症を対象として流行予測の数理モデルを作成した(業績1)。RSウイルス感染症の数理モデル研究は未実施であり、進捗は遅れている。 本研究の実施計画は、①流行期に影響する可能性のある因子とRSV感染症発生動向を時系列及び空間的に記述し、時系列解析を用いて発生動向に関連する因子を探索すること、②RSV感染症流行を予測する数理モデルの作成と検証すること、また、③既存のRSV感染症発生データから、RSV感染症の流行動態の把握に重要となる再生産数の推定、及び流行期の変動が再生産数へ及ぼす影響を分析することである。現時点で計画①の解析を終えており、解析①の一部を論文発表している(業績2)。
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Strategy for Future Research Activity |
RSV感染症流行を予測する数理モデルを作成・検証すること(本研究の実施計画②)、既存のRSV感染症発生データから、RSV感染症の流行動態の把握に重要となる再生産数の推定、及び流行期の変動が再生産数へ及ぼす影響を分析すること(実施計画③)について実施する。2020年度は、大阪府ではRSウイルス感染症の流行が認められなかった。新型コロナウイルス感染症の流行対策や海外から日本への渡航者数の減少がRSウイルス感染症発生動向に及ぼした影響についても上記数理モデルに取り入れ、解析する。 新型コロナウイルス感染症の研究については、昨年度実施した流行予測研究の報告書作成を継続実施する。また、これまで全国の都道府県の積極的疫学調査にて集積された公表データを疫学的に記述・解析することは、今後の感染症制御において貴重な情報となり得る。感染症疫学の重要な指標の一つである年齢別の感受性(感染リスク)が流行時期・状況に応じてどのように変化するか、各都道府県が公表する積極的疫学調査情報を用いて評価する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行拡大を受け、本年度計画していた国際学会の出張を中止した。また、参加した国内外の学会がオンライン開催されたことに伴い、旅費の支出が減少した。以上より次年度使用額が生じた。繰越金については、翌年度の学会発表、論文発表、出張旅費に利用する。
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Research Products
(3 results)