2021 Fiscal Year Research-status Report
オーラルフレイル・口腔機能低下への新戦略-予知性の高い早期リスク判別法の確立-
Project/Area Number |
19K24267
|
Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
町谷 亜位子 明海大学, 歯学部, 助教 (30848916)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 唾液 / 歯周疾患 / 口腔内細菌 / う蝕 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の口腔疾患や口腔衛生状態の評価法は煩雑で多項目に渡り、迅速な判断が求められる臨床応用のハードルは高い。また、歯科専門職による評価が必須であるため評価者が限られることも問題点の一つである。本研究では、口腔疾患の兆候を迅速に探知可能なスクリーニング法を模索するため、非侵襲的に採取できる唾液やプラークを試料とし解析を行った。 当該年度では、前年度に引き続き新型コロナウィルス感染症の影響で被験者を必要とする臨床研究には制限が大きく、特に感染症の発症・重症化リスクの高い高齢者を対象としたデータ収集が非常に困難な状況であった。このことから、研究計画を大幅な変更が必要になったものの、口腔内状態を反映する簡便なスクリーニング法の探索において一定の進捗を得た。 口腔衛生状態評価の有効性を比較するため、当該年度では、新たに10代・20代の若年層の矯正治療患者を対象に研究を行った。矯正治療患者は、口腔内装置の複雑さから口腔清掃状態が悪化しやすいことに着目し、矯正治療患者を「口腔内疾患ハイリスク群」とし、口腔清掃状態をより明確に評価できるスクリーニング法を見出せるのではないかと考えた。解析の結果、CariScreenを用いたATP測定法の有用性が明らかになった。 また、代表的な歯科疾患であるう蝕に対する新しいスクリーニング法を見出すことを目的とし、電子顕微鏡技術を用い、歯を構成するアパタイト結晶の微細構造解析を行った。解析結果から、従来では常識とされていたアパタイト結晶の生成経路以外に新たな経路の存在が示唆された。この研究成果は、う蝕の早期発見だけでなく、酸蝕症やエナメル質形成不全、斑状歯などアパタイト結晶の構造破壊が起こる口腔疾患に関して予防的・治療的アプローチの一助となる可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、臨床研究(疫学的手法)を主軸とした研究計画としていたが、新型コロナウィルス感染症の影響で、感染源となる口腔内サンプル採取、及び感染症の発症・重症化リスクの高い高齢者を対象としたデータ収集が非常に困難な状況となった。当該年度は、当初の計画から大幅な変更が必要となったもの、被験者を若年者の矯正治療患者に切り替え、口腔疾患ハイリスク群とすることで、口腔疾患リスクを反映する簡便なスクリーニング法を明らかにするという本研究の目的が達成された。 また、コロナ禍の終息に関わらず研究成果を得るため、基礎研究の比重を上げるよう研究計画の変更を行ったが、アパタイト結晶の微細構造に関する解析から、従来の常識に一石を投じる結果が見出されたことも大きな進展であると考えられる。 本研究課題に取り組むにあたり、当初予期できなかった世界的な新型コロナウィルス感染症の拡大と長期化という問題に直面したが、研究課題の解決、目的達成に向けて柔軟に研究計画の変更を行い、成果を収めることができたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 収集データに基づいた口腔疾患とスクリーニングデータの分析 当該年度の結果から、ルシフェラーゼ反応によるATP測定を用いた口腔疾患の非侵襲的スクリーニング評価の有用性が明らかになった。引き続き、口腔疾患の非侵襲的スクリーニング評価方法について、さらなる分析を進める。今回は、口腔清掃状態の評価のみであったが、歯周疾患の重症度と多項目・短時間唾液検査システムの結果についても一部相関が認められているためさらに分析を行い、歯科専門職でない者でも可能な歯周疾患のスクリーニングの可能性を探る。 2. 研究成果の公表 2022年度は研究計画の最終年度にあたるため、これまでの研究成果について、学会発表、論文において積極的に公表していく。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響で臨床研究データ収集が困難となり、予定していた検査キット購入費用が不要となったこと、また、学会の中止やWeb開催のため、学会参加費、及び旅費などの必要経費が大幅に減少したこと、研究計画の変更により論文発表が次年度に予定変更となったことが、次年度使用額が生じた原因となっている。当該年度の研究費に未使用額が生じたが、コロナ禍に合わせ柔軟に研究計画を変更出来ており、成果を得ることができている。研究計画変更に合わせ、今年度行う予定の研究計画と併せて実施する。
|
Research Products
(2 results)