2020 Fiscal Year Research-status Report
ハムストリング肉離れ再発における複合要因の解明ー線維化した筋組織と他要因の関連ー
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19K24299
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
西田 智 福岡大学, スポーツ科学部, 助教 (40847513)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | ノルディックハムストリング / デッドリフト / 体幹・股関節伸展筋群 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、コロナ禍にあったため医療機関にて研究目的でMRIを撮像することが難しく、当初予定していた研究内容を積極的に進めることができなかったが、その分令和元年度の実験結果の成果報告(第75回体力医学会および第31回臨床スポーツ医学会)や2編の論文執筆作業ならびに実験結果を踏まえた次なる研究の計画および実行に時間を割き有意義な研究活動を行えた。本研究の主たる目的であるハムストリング肉離れの複合要因の解明という点においては、ノルディックハムストリング中に発揮される力(NH strength)に着目し、関連する因子について継続的に研究を進めてきた。令和元年度に行った実験によって、同じくハムストリング肉離れの予測因子とされる単関節の膝関節屈曲筋力およびその際のハムストリングの筋活動はNH strengthと関連しないことが示されたため、令和2年度は複合関節運動でありハムストリングの作用も深く関わっているスクワットおよびデッドリフトの最大挙上重量ならびに片脚でのホッピングテストとNH strengthとの関連を明らかにするために実験を行った。その結果、デッドリフトの最大挙上重量がNH strengthと独立して有意に関連することが明らかとなり、NH strengthは股関節伸展および伸張性膝関節屈曲筋力を複合的に評価可能な指標である可能性が示された。本研究結果から、ハムストリング肉離れ後に安全に競技復帰するためには、デッドリフトに類似した運動様式のトレーニングを行いNH strengthを強化することが重要である可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた既往者を対象としたMRI撮像がコロナ禍の影響を受け全く実施ができていないという状況を受け、進捗状況としては「やや遅れている」と判断する。しかし、本研究の主たる目的である、ハムストリング肉離れの複合要因の解明という点においては、NH strengthとその他のハムストリング肉離れの要因との関連について研究を進められており、NH strengthのハムストリング肉離れの予測因子としてのエビデンスを高めることができているという意味では一定の研究成果を上げられていると考える。特に、NH strengthとデッドリフトの関連を明らかにできたことは、近年ハムストリング肉離れにおいて体幹・股関節周囲の筋群の重要性が認識されつつある中で、さらなるNH strength評価の重要性を示す知見となりうるとともに、今後のNH研究における新たな着眼点を示すことができたと考える。研究成果の報告という点では、2つの学会において発表するとともに論文執筆も順調に進められているため、同様に一定の成果を上げられていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も、社会情勢を鑑みながら既往者のMRI撮像に協力していただける病院を探していくが、まずはこれまでの研究成果を論文化することに主眼を置き、今年度中の2編の論文採択を目標にする。並行して、令和2年度の研究によって明らかにできたNH strengthと体幹・股関節伸展筋群との関連について筋電図を用いたさらなる検討を進め、NH strengthの強さに関連する体幹・股関節伸展筋群の筋活動動態を明らかにする。最終的にはハムストリング肉離れ既往者を対象にNH strengthに着目して研究を進め、既往者におけるNH strengthの特徴に関連する因子を明らかにすることで、ハムストリング肉離れ受傷後のリハビリテーションにおいてNH strengthを効率的に向上させるためのプログラム確立に向けた有用な知見を得たい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍にあり、当初予定していたMRI撮像が行えなかったため、MRI撮像分としての予算が次年度使用額として算出された次第である。今年度も社会情勢を鑑みながらMRI撮像に協力していただける病院があればMRI撮像費用に充てていくが、並行して論文執筆作業および追加実験等を進めていくため、MRI撮像が叶わなかった場合は、論文投稿費用や実験被験者に対する謝金として使用したいと考える。
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