2019 Fiscal Year Research-status Report
歩行速度の増加を要求される状況下での高齢者の転倒メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K24302
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
肥田 直人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 産総研特別研究員 (80850552)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 最大速度での歩行 / 動的安定性 / 身体重心 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者における転倒は要介護状態を招く主たる要因であり,超高齢社会を迎えた我が国にとってその予防は喫緊の課題である.転倒は歩行中に最も頻繁に生じることから,転倒予防には歩行中に転倒が生じるメカニズムを明らかにする必要がある.歩行速度は転倒リスクと関連しており,歩行速度の低下した高齢者は転倒リスクが高い.一方で,転倒ハイリスク者の歩行は,健常若年者よりもむしろ動的に安定していることが報告されている.つまり,バランス能力の低下した個人は,転倒リスク低減のためにゆっくりと歩行していると考えられる.しかしながら,転倒が多く報告されている屋外では,横断歩道など歩行に時間的制約が課せられる場面が多数存在する.時間的制約のため歩行速度の増加を強いられる状況下において,安定な歩行を実現できないことが,高齢者の転倒の要因として考えられる.しかしながら,高齢者が歩行速度を増加させた際の歩行の動的安定性は,これまでに定量的に評価されていない.そこで本研究では,最大速度での歩行時の重心の動的安定性を定量的に分析することで,若年者と高齢者の歩行時の動的バランス制御の違いを明らかにすることを目的としている. 2019年度は,健常若年者11名を被験者として,三次元動作解析装置と床反力計を用いて快適速度条件および最大速度条件での歩行を計測した.2020年度は転倒のリスクの高い高齢者を対象として計測を実施する予定である.2019年度に得られた若年者のデータと,2020年度に取得予定の高齢者のデータを比較していくことで,歩行速度の増加に伴い高齢者の転倒リスクが増加する要因を明らかにしていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.2019年度は健常若年者を対象とした計測を実施することで,計測を安全に遂行するうえでの実験系を確立することができた.そのため,高齢者を対象とした計測もスムースに遂行できることが見込まれる. 2.2019度は快適速度条件および最大速度条件での若年者の歩行を計測し,歩行の動的安定性を分析した.この分析内容は,既に第 64 回システム制御情学会研講演会にて発表を終えている. よって,本研究は概ね順調に進んでいると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
現在はコロナウイルスの影響で,高齢者を対象とした計測は中断している.しかし,被験者のリクルート作業は既に終えているため,計測再開の目途が立ち次第,速やかに研究を遂行できると考えている.
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大の影響で研究が一時中断したため,次年度使用額が生じた.計測再開後に速やかに研究を遂行できるよう,これらを「被験者リクルート費用」,「計測補助スタッフ費用」,および「データ解析ソフトウェア導入費用」として活用していく予定である.
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Research Products
(1 results)