2019 Fiscal Year Research-status Report
学習者の主体的な取り組みを促進するボトムアップ型の運動指導方略の開発と効果検証
Project/Area Number |
19K24308
|
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
松浦 佑希 宇都宮大学, 教育学部, 助教 (90844788)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 運動学習 / 運動技能 / 体育授業 / 体操 / 教育 / 学習方略 |
Outline of Annual Research Achievements |
学習者一人ひとりに合った運動技能を身に着けさせることを可能にするため,環境と学習者個人の相互作用の中で発生する体験そのものを効果的に積み重ねることによってボトムアップ的に学習させる方法として,人間の運動学習の方法をモデルにしたヒューマノイドロボットの運動学習で活用されているグローバルダイナミクスアプローチ(Yamamoto & Kuniyoshi,2002)を応用し,「感覚経験型指導法」を考案した(松浦ら,2018;2017).学習者の体験からの学びを重視した指導方略である「感覚経験型指導法」について,通常の指導方法(モデル習得型指導法)と比較を行った結果,学習者の主体性や運動の楽しさを高めることが確認されていることから,教育現場への応用価値が期待されるが,その学習効果の内的・外的プロセスとしての認知過程や習得した動作の特徴などが検討されていないため,教育現場へ応用するには知見が不足している.そこで,研究課題1において上記課題を検討し,研究課題2において,研究課題1の成果を踏まえ指導方略を小・中学校における体育授業現場へ応用し,学習者の主体性(心理的効果),運動技能向上効果,対人的効果(社会的効果)の検証を行う. 研究課題1では大学生29名を対象とし,無作為に2群(感覚経験群・モデル習得群)に分け,それぞれの指導方略に従ってGボール上で行うバランス課題の練習を実施した.その結果,感覚経験型指導法では課題に対するロバスト性(バランスの復元力)が高まることを確認した.学習者の体験について,特に特徴的であったのは,感覚経験群では自己の成長に,モデル習得群では課題の達成に意識が向きやすいことが確認され,それぞれの指導方略において異なる特徴を有する仮設モデルが生成された.この結果を踏まえ,中学生用の感覚経験型指導法を考案し,研究課題2-1において,中学校体育授業において実施した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題1について,動作分析の結果に関する研究成果については,the 2020 Yokohama Sport Conference Program Committeeにおいて研究報告を行うことが決まっている.動作結果および内的な変化に関して,概ね仮説通りの結果となった.内的な変化に関しては,動作分析の結果と合わせ,今後さらに詳しく分析を行う. 研究課題2-1の中学校体育への応用に関しては,健常な中学生124名を研究対象者とし,①実態調査として観察調査研究を実施した.②調査結果に基づき,中学生版感覚経験型指導法を考案したうえで,対象者をクラスごと無作為に2群に分け,運動課題の練習を実施し,心理・運動技能・対人(社会)的効果に関するデータを取り終えて,今後分析をさらに進める.今年度実施予定である研究課題2-2(小学校体育への応用:実態調査,小学生版の指導の考案,授業への導入)に関しては,中学校と同様の手順を用いて(実態調査,小学生版の指導の考案,特定のクラスへの導入),小学校体育授業での実践を行い,両指導方略の有効性を検証する予定であったが,COVID-19の影響により,実際に小学校現場での実施は難しいと考えられる.2つの課題については,概ね順調に進んでいるが,研究課題2-2に関して,研究計画に修正が必要があることから,概ね順調に進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究課題1および2-1に関して,それぞれ分析をさらに進め,研究成果のまとめに取り掛かる.これらの研究成果について,学術大会における研究報告だけでなく,学術大会での研究報告によって得られた意見などを踏まえ学術論文を執筆し,国内外の学術雑誌に投稿する予定である.研究課題2-2に関しては,今年度実施予定であったが,現状として,COVID-19の影響により,実際に小学校現場での実施は難しいと予想される.そのため,研究課題1および2-1の結果より小学生用の指導方略の考案をおよび実施計画を行い,可能な範囲で研究を進める.研究課題2-1の課題として,学習者の主観的な評価では違いを検討することが出来なかったことから,小学生を対象とする場合は,効果の測定方法に関してさらなる検討が必要である.また,中学生の結果では男女差がみられたことから,男女差に関しても効果の違いを考慮し検討する必要がある.
|
Research Products
(1 results)