2019 Fiscal Year Research-status Report
An ergonomics study of a haptic interface using a pulling illusion
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19K24374
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
田辺 健 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (60847557)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 牽引力錯覚 / 人間工学 / ハプティクス / ヒューマンインタフェース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,モバイル環境下で利用できる視聴覚に続く新たな感覚情報提示技術を実現するために,牽引力錯覚を利用したハプティックインタフェースの設計論を明らかにすることである.ヒトは非対称振動を提示されたとき,振動を一方向に牽引力として錯覚することが知られている(牽引力錯覚).一方で従来の設計論は錯覚が生起する条件を模索した局所的な解であった.本研究では,非対称振動を厳密に制御した環境下で牽引力錯覚における心理・生理特性を人間工学実験を通して明らかにする. 初年度は牽引力錯覚が生起する非対称振動波形のパラメータを明らかにした.研究代表者のこれまでの研究で開発した非対称振動を厳密に制御できるボイスコイル型振動子を使用し,波形を細かく変化させた際の錯覚の特性を心理物理実験によって評価した.その結果,振動加速度の時間的変化率が立上り部分と立下り部分で差が最大のときに錯覚が最も生起した(N=10).つまり,のこぎり波のような時間軸方向に非対称な振動が錯覚を誘発するために有効であることが示唆された.また,振動の周波数に依存することなく,時間軸方向に非対称な波形で錯覚が生起することが確認された(N=16).最後に,非対称振動の周波数と錯覚の関係を評価した.その結果,数百Hzの高周波に比べて,数十Hzの低周波の方が錯覚が生起する閾値が小さいことが確認された(N=16).つまり,低周波の方が錯覚が生起しやすいことを意味する.以上の通り,振動波形レベルでの設計論を明らかにすることができた. 次に以上の実験で明らかになった非対称振動を市販のボイスコイル型振動子に実装するために,振動子の特性をシステム同定し,逆システムを用いて入力信号を生成した.その結果,狙い通り非対称振動を生成することができ,牽引力錯覚が誘発された.以上の通り,アクチュエータレベルでの設計論を明らかにすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は牽引力錯覚を利用したハプティックインタフェースの振動波形レベル,アクチュエータレベルの設計論を明らかにすることを目標としており,その両方を達成することができた.そのためおおむね順調に進展していると考えられる.振動波形レベルの設計論に関する論文の1報目が投稿済みであり,2報目は投稿準備中である. 次年度に行うヒトレベルでの設計論を明らかにする予定であり,人間工学実験で使用する牽引力錯覚を利用したロボットマニピュランダムの開発にすでに着手している.よって,次年度の準備も十分に進められている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はヒトレベルでの設計論を明らかにするために,錯覚時の情報処理のモデルを明らかにする.錯覚時に牽引力される感覚にともない上肢運動が生じる現象に着目し,牽引力錯覚と上肢運動を含めた条件で人間工学実験を行う.実験参加者自身による能動運動やロボットマニピュランダムによる受動運動をした際の錯覚の心理的な特性や筋電位からどのような情報処理が行われているかを明らかにする.
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Causes of Carryover |
初年度に計画していた実験をこれまでの研究で開発した装置だけで実施することができた.また,新型コロナの影響で予定した外国出張が中止になった.以上の理由により,当初の計画より使用額が小さくなった.
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Research Products
(5 results)