2019 Fiscal Year Research-status Report
複数衛星データの統合利用技術を用いた森林消失自動検知システムの開発
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19K24395
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
水落 裕樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (20849963)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 複数衛星データの統合利用 / ベイズ的機械学習 / ドローン空撮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、複数衛星データの統合利用による、空からの森林消失検知手法の開発を主眼としている。2019年度は、ベイズ的機械学習(Bayesian Updating of Land Cover)の応用によりマイクロ波衛星データ(PALSAR-2)と光学衛星データ(Landsat, ASTER)の柔軟な統合を可能にする手法を開発するとともに、当該手法の適用可能性を、森林伐採が進んでいる世界の複数のテストサイトにおいて調べた。当該成果は査読付き国際誌(Remote Sensing)での公表1件・国際学会での発表1件・国内学会での発表1件に結び付いた。さらに、効率的な地上検証データの収集に活用するため、無人航空機(ドローン)による空撮に着目した。本年度は森林上での導入にむけたテストとして、国内の開けた農地(国土交通省・航空局の定める人口密集地域の外)を対象として数百枚の空撮を行い、これらの写真にSfM-MVS (Structure from Motion, Multi-View Stereo) 技術を適用することにより農地のオルソモザイク画像および3次元モデルが作成できることを確認した。また地上座標測量用のGNSS機器を導入し、GPS付きドローンの空撮から作成された当該3次元モデルの座標(緯度・経度・標高)との比較も実施したが、現状ではGNSS機器の精度が不足していると思われたため、更なる高精度機器の導入および測量手順の見直しが必要と思われる。今後は森林上でのドローン空撮手順を確立するとともに、得られた地上検証データによる森林検知手法の再評価を行い、手法適用範囲の広域化・自動化に結び付ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予算交付に先立ち、まずベイズ的機械学習の応用による衛星データ統合アルゴリズムの開発を行い、これを国際会議(ISTS)で発表するとともに、衛星リモートセンシング分野の主要国際誌のひとつであるRemote Sensing誌で公表した。また、当該手法の適用可能性を世界の複数の森林サイトにおいて調べ、当該成果を日本リモートセンシング学会第67回学術講演会で発表した。これらの成果は当初計画であった研究課題をほぼ達成するものであり、大幅な進展であるといえる。ただし、これらの研究の過程で、森林サイト上での地上検証データの不足が課題となることがわかった。現状ではオープンフリーの高解像度光学衛星データ(Sentinel-2)の画像判読により疑似的な地上検証データを取得しているが、(1) データの精度が判読者に依存する、(2) 雲が被覆する時期に検証データが不足しがちとなる、(3) 判読作業の手間が膨大であるといった課題がある。データの精度を高めるには、衛星データの判読に加えて現地踏査による確実な地上検証データの収集が必要と思われる。そこで、効率のよい現地踏査の実現に向けてドローンによる空撮の利用に着目した。空撮写真の画像判読で森林消失地点を確実にチェックできるだけでなく、画像処理技術を活用して、森林消失地点の自動検知や、森林の3次元構造の把握などにも役立てられる可能性がある。ドローン空撮の活用にむけ、本年度は、研究代表者の所属機関で所有するドローン(Phantom 4 RTK)の飛行テストを行った。茨城県結城郡の開けた農地上(国土交通省・航空局の定める人口密集地域の外)を対象に空撮を実施するとともに、複数の基準点においてGNSS測量を実施し、オルソモザイク画像および3次元モデルが作成できることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は主にドローン空撮に基づく効率的な地上検証データの取得にむけた手法の確立を行う。ドローン空撮画像による広域のオルソモザイク画像の作成や、ドローン空撮画像にSfM-MVS (Structure from Motion, Multi-View Stereo) 技術を適用することによる3次元形状の把握はすでに手順が確立され、多くの分野で利用されてきている。ただし森林サイトにおいて当該技術を実行するにはいくつかのハードルがある。とくに密な森林上では、SfM-MVS技術の実行に必要となる特徴点のマッチングが画像上で取りづらく、また緯度経度測量の基準点となるGCPを置ける場所(空から視認可能な開けた林床)も限られることから、オルソモザイク画像のゆがみや3Dモデルにおける樹冠・樹幹の抜けなどが発生しがちである。2019年度のテスト飛行時に、GNSS測量の精度が不十分な場合があることがわかったため、まずより高精度なGNSS測量の実施を行う。さらに、地上3Dレーザースキャナ等や航空機ライダー等により既に森林の3次元構造が詳しく調べられている国内の林木を活用し、ドローン空撮から求めた3Dモデルとの比較を行う。pix2pix等の深層機械学習を応用することで、空撮画像のゆがみ補正や3Dモデルの再現精度の向上できないか検討する。このように取得された検証データをもとに、2019年度に開発された衛星データの統合利用手法を再評価し、今後の森林消失検知の広域化・自動化に結び付ける。
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