2022 Fiscal Year Research-status Report
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19K24683
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
宮本 百合 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (60794641)
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Project Period (FY) |
2021-03-12 – 2024-03-31
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Keywords | 文化 / 感情 / 無常観 / はかなさ / 美的知覚 / 精神的・身体的健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では2021年度に日米で行った調査によって、移ろいやすい風景の画像を見た際に、「はかなさ」を感じがちな人は、「悲しみ」も感じやすく、かつ、その風景に意味を見いだし、心を動かされる傾向があることが示された。また、はかないものを美しいと感じる傾向のある人ほど、主観的幸福感が高い傾向が見られた。2022年度は、2021年度の調査を基にして、3つの方向に発展させた。まず、相関的な調査だけではなく、「はかなさ」を実験的に操作することによって、はかなさの知覚と感動との間の因果関係を検証する実験を行った。これらの実験によって、はかなさが顕著にされた条件では、統制条件に比べて、より悲しみを感じ、心を動かされる傾向があることがわかった。また、はかなさを感じた時の感情反応を、自己報告による主観的評定だけでなく、生理指標によって測定するために生理実験を開始した。さらに、文化的産物の中で「はかなさ」と共起する単語や歴史的変遷を検証するために、日本で過去約50年間に流行った歌詞の意味分析を行った。その結果、「花」「消える」「散る」などと共に「美しい」という単語と共起していることがわかった。また、ネガティブな感情の中では、「悲しみ」の感情に関連した語彙は、「怒り」や「不安」に関連した語彙に比べて、時代を通じてより多く見られている一方で、「悲しみ」の感情に関連した語彙は共に、過去50年の間に徐々に減ってきていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「はかなさ」を実験的に操作する実験を行った。また、対面での実験が可能になったため、生理実験を開始することができた。さらに、「はかなさ」と共起する単語や歴史的変遷を検証するために、約7000曲の歌詞の分析を行った。また、次年度に行うフィールド調査と、多国間比較調査の準備を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度から継続中の実験に加え、はかなさの中に肯定的な意味を見出す感情のあり方が、日常生活の中での主観的幸福感や精神的・身体的な健康に結びついているかどうかを検証するために、フィールド調査を実施する。さらに、そのような感情のあり方の歴史的・生態学的基盤を検証するために、多国間比較調査を実施する。
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Causes of Carryover |
当初2022年度目の最後に予定していた物品の購入が2023年度目になったため、次年度使用額が生じた。2023年度目の4月に既に発注・納入済みである。
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