2020 Fiscal Year Research-status Report
らせん構造を有するナノグラフェンおよびグラフェンナノソレノイドの合成と物性評価
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19K24686
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
成田 明光 沖縄科学技術大学院大学, 有機・炭素ナノ材料ユニット, 准教授 (30870133)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノカーボン / 多環芳香族炭化水素 / ナノグラフェン / ヘリセン / らせん構造 / 脱水素環化反応 / キラリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、正確な化学構造を有するグラフェンナノソレノイドのボトムアップ合成への出発点として、らせん状ナノグラフェンやπ拡張ヘリセンの多段階合成と光学的性質の評価に取り組んだ。特に、ナフチル基やアントリル基を有する複数の前駆体構造を設計・合成し、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(DDQ)と異なる有機酸の組み合わせや、塩化鉄(III)を用いた脱水素環化反応によるナノグラフェン構造への変換を検討した。反応条件のさらなる最適化と合成のスケールアップは次年度の課題となるものの、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりビスアンテンの部分構造を有する新奇π拡張ヘリセンを単離し、NMRや質量分析による同定に成功している。このπ拡張ヘリセンは非常に強い赤色発光を示すことが明らかとなり、発光デバイスやバイオイメージング等への応用が期待される。さらに高次のπ拡張ヘリセンの合成も進めており、対応する前駆体の合成に成功した。これらの前駆体は、複数のアセン型多環芳香族炭化水素を結合した興味深い新規化合物群でもあり、分光分析による光学的性質の評価を進めている。一方で、本研究開始前の準備段階で合成法を確立したπ拡張ヘリセンについても時間分解発光分光やりん光測定による光学的性質の評価を進めるとともに、光学異性体のキラルHPLCによる大量分取を見据えた分離条件の検討も行った。また、バイオイメージング等への応用へ向けて水溶化の検討を行い、π拡張ヘリセンを内包した水溶性ナノ粒子の調製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度にドイツから帰国し、10月に沖縄科学技術大学院大学にて本研究を開始した。研究室の立ち上げとともに合成実験を開始し、強い赤色発光を示す新奇π拡張ヘリセンの合成に成功した。その他複数の前駆体合成や既知のπ拡張ヘリセンを用いた物性評価と応用検討も進んでおり、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果に基づいてさらなるπ拡張ヘリセンの合成検討を進め、より大きな共役系を有するらせん状ナノグラフェンの合成へと進めていく。得られた化合物から順次各種分光分析やデバイス測定を国内外の共同研究者と協力して行い、詳細な光物理特性や電気的性質を解明するとともに、さらなる新奇構造の設計と合成検討へと繋げていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症に関する水際対策強化の影響で、本研究に従事する予定の外国人博士研究員が年度内に入国できなかったため。次年度以降に追加で博士研究員を雇用するなどして研究を加速する。
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