2021 Fiscal Year Annual Research Report
神経発生工学とヒト腫瘍ゲノム学を駆使した脳腫瘍発症の新規メカニズム解明
Project/Area Number |
19K24687
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
川内 大輔 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 病態生化学研究部, 室長 (10400996)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 小児脳腫瘍 / 大脳皮質 / ゲノム編集 / マウスモデル / オミクス解析 / WHO脳腫瘍分類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、小児脳腫瘍の中でも悪性度の高いテント上上衣腫に着目し、腫瘍特異的な遺伝子変異、なかでも融合遺伝子の機能について、発生生物学的、遺伝学的、分子生物学的手法を用いて多角的に解析する。まず国際共同研究においてヒト上衣腫1056検体のRNAシーケンスとDNAメチル化アレイを行い、ZnフィンガーDNA結合領域をもつ核タンパク質ZTFAの一部をコードする新規の融合遺伝子群を同定した。次に、これらの融合遺伝子をそれぞれクローニングし、マウス胎仔脳の神経前駆細胞にゲノム編集技術を用いて恒常的に発現させた結果、それぞれの融合遺伝子が上衣腫様の腫瘍をマウス脳内に誘導することから、これらの融合遺伝子が発がん性を持つ、がんの原因遺伝子であることが明らかになった。次にこれらの融合遺伝子の発がん機構を探るために、ZnフィンガーDNA結合領域を欠損させると発がん能が消失したことから、ZFTA融合遺伝子は下流でがんシグナルを活性化している可能性が示唆される。さらに、ZFTA融合遺伝子のパートナーとなっている遺伝子はいずれも転写活性ドメインをもっていることから、ZFTA融合遺伝子ががん遺伝子を活性化している可能性がある。そこで、ここで開発したマウス腫瘍およびヒト上衣腫検体で共通して発現が高い遺伝子を絞り、その中からSHHシグナルのエフェクター遺伝子GLI2を見出した。さらにGLI2の遺伝的もしくは薬理的な阻害により、上衣腫細胞の増殖は培養下および生体内で抑制されることを証明した。このことから、ZFTA型融合遺伝子がNon-canonicalなSHHシグナルを活性化し、腫瘍細胞の増殖を促進していることを明らかにした。これらの結果を踏まえ、2021年のWHO脳腫瘍分類ではテント上上衣腫においてZFTA型が分類名として加わり、国際的な脳腫瘍研究に貢献することができた。
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[Journal Article] Cross-species genomics reveals oncogenic dependencies in ZFTA/C11orf95 fusion-positive supratentorial ependymomas.2021
Author(s)
Zheng T, Ghasemi DR, Okonechnikov K, Korshunov A, Sill M, Maass KK, Benites Goncalves da Silva P, Ryzhova M, Gojo J, Stichel D, Arabzade A, Kupp R, Benzel J, Taya S, Adachi T, Shiraishi R, Gerber NU, Sturm D, Kawauchi D, Pajtler KW, et al.
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Journal Title
Cancer Discov.
Volume: 11
Pages: 2230-2247
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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