2021 Fiscal Year Research-status Report
シナプス分化因子と間葉系幹細胞によるALS神経変性の抑制メカニズムの解析
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19K24690
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
西宗 裕史 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (40870043)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神経筋接合部 / ラミニン / アクティブゾーン / 運動神経 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動神経細胞が選択的に変性し、運動機能が損なわれ、患者が呼吸不全に陥る疾患であるが、その病因またはALS神経筋接合部の脱神経機序は未解明である。本研究計画では、申請者が明らかにしたシナプス小胞放出部位を組織化する分子機序(Nishimune H, et al. Nature, 432, 580, 2004)に基づき、ALS神経筋接合部の脱神経機序の解明を試みる。先述の分子機序とヒト臍帯由来間葉系幹細胞を組み合わせ、ALSモデル動物の神経筋接合部の脱神経とALS疾病症状を緩和できた予備実験結果は、他ALS研究者が取り組んでいない独自手法である。本研究計画の目的は、ALS神経筋接合部でシナプス分化因子ラミニンβ2が減少する機序と、ヒト間葉系幹細胞がALSモデルマウスの症状を緩和する機序の解明にある。 当該年度においては、ALS神経筋接合部でシナプス分化因子ラミニンβ2が減少する機序の解析として、運動神経終末の電位依存性カルシウムチャネルを超解像STED顕微鏡で解析し、その発現量が減少していることを見出した。 複数ドーナー由来のヒト間葉系幹細胞を用い刺激条件と通常条件で培養し、分泌蛋白質をウェスタンブロットやELISAで検証した。殆ど細胞においてラミニンβ2と神経栄養因子群の分泌が非常に高くそして再現性良く上昇するが、その分泌レベルには細胞間で差異があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
運動神経終末の電位依存性カルシウムチャネルの発現量が減少していることを見出した結果は、運動神経細胞に起因する機序により電位依存性カルシウムチャネルのリガンドであるラミニンβ2がALS神経筋接合部で維持できなくなり減少している可能性を見出せた。また、複数ドーナー由来ヒト間葉系幹細胞でラミニンβ2と神経栄養因子群の分泌上昇を確認した結果は、治療に最適な間葉系幹細胞が存在すること、またそれを選別する方法を見出せたと考えられる。これらの結果に基づき間葉系幹細胞の発現遺伝子解析が進められているので、間葉系幹細胞がALSモデルマウスの症状を緩和する機序の解明が進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
間葉系幹細胞の発現遺伝子解析を続行し、ラミニンβ2と神経栄養因子の分泌が促進されるメカニズムを試みる。また、ヒト間葉系幹細胞から分泌されるそれら以外のサイトカイン群の同定を試み、骨格筋の萎縮を抑制できるメカニズムを探る。また、複数のALSモデル動物を用いて、開発中の間葉系幹細胞を用いた治療メカニズムが効能を示すか検討する。
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Causes of Carryover |
引き続きJREC-IN Portalや所属研究所ホームページ人材募集欄で公募したが、プロジェクトに適任な応募者がなく研究員の採用に時間がかかった。2021年度初めに採用したポスドク(来日中印度人)は1ヶ月で辞職した。そのため、2021年度中に技術員1名を採用し、2022年度はじめに技術員2名を採用した。よって、本年度予定していた人件費を次年度に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)