2022 Fiscal Year Research-status Report
シナプス分化因子と間葉系幹細胞によるALS神経変性の抑制メカニズムの解析
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19K24690
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
西宗 裕史 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (40870043)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経筋接合部 / ラミニン / アクティブゾーン / 運動神経 / 幹細胞 / 筋萎縮性側索硬化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動神経細胞が選択的に変性し、運動機能が損なわれ、患者が呼吸不全に陥る疾患であるが、その病因・機序は未解明である。ALS患者の組織やALSモデルSOD1G93Aマウスの組織では、運動神経細胞体の変性前に神経筋接合部が変性し脱神経症状を示すことから、ALSは逆行性神経障害と考えられている。しかし、ALS神経筋接合部の脱神経機序は未解明である。申請者は運動神経細胞のシナプス伝達に重要なシナプス小胞放出部位を形成する分子機序を発見した。この機序は、筋細胞より分泌されたシナプス分化因子(ラミニンβ2)が特異的受容体(電位依存性カルシウムチャネル)に結合し、この受容体を運動神経終末に固定する。さらに、この受容体の細胞質側にシナプス小胞放出部位(アクティブゾーン)に特異的な蛋白質(バスーンやエルクスなど)が結合し神経筋接合部のシナプス伝達に重要な構造を形成する機序である。また、申請書はALS神経筋接合部の脱神経機序にミトコンドリアの変性が関与すること、ミトコンドリアなどの細胞内エネルギー代謝を活性化するオキサロ酢酸を投与することでALSモデルSOD1G93Aマウスの症状を改善できること、ALSモデルSOD1G93Aマウスの運動による介入研究により神経筋接合部の脱神経を抑制出来る事を報告してきた。本研究計画の目的は、先述のシナプス伝達に重要な構造を形成する分子機序に基づき、ALS神経筋接合部の脱神経機序の解明と、ヒト間葉系幹細胞がALSモデルマウスの症状を緩和する機序の解明にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度においては、間葉系幹細胞の発現遺伝子解析のため、RNA-seq解析準備とデータ解析方法の構築を行い、候補遺伝子のRT-qPCRによる発現解析を行った。また、ラミニンβ2以外の分泌蛋白質が相互作用し共益する機序の有無を解明するため、サイトカインの抗体アレイやマイオカインのマルチプレックスを用い解析した。さらに、複数ドーナー由来ヒト間葉系幹細胞を多量に並行培養した場合でも、安定してラミニンβ2と神経栄養因子群の分泌上昇を確認できた。この結果は、治療に最適な間葉系幹細胞を安定に多量に準備できることを意味している。これらの結果に基づき間葉系幹細胞の発現遺伝子解析が進められているので、間葉系幹細胞がALSモデルマウスの症状を緩和する機序の解明が進んでいると考えられる
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Strategy for Future Research Activity |
間葉系幹細胞の発現遺伝子解析用RNA-seqの結果解析を進める。また、間葉系幹細胞を用いた治療メカニズム解明のため、ALSモデル動物の発現遺伝子解析を行う。これらの方法で間葉系幹細胞がALSモデルマウスの症状を緩和する機序の解明が進める
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Causes of Carryover |
JREC-IN Portalや所属研究所ホームページ人材募集欄で公募したが、プロジェクトに適任な応募者がなく研究員の採用に時間がかかった。2021年度にポスドク1名、技術員1名、2022年度に技術員2名を採用したが、ポスドクは採用1ヶ月後に自己都合により退職した。この様に採用が遅れた人件費を次年度に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)